川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
「2013年春入社の新卒採用について、日本経団連はエントリー受付や説明会の開催を12月以降にする」ように会員企業に求めるという報道がありました。現状、大学3年生の10月から始まっているのを、2カ月遅らせるようにしようということですが、何と中途半端な対応策だろうと思います。根本的な議論をせずに、会員企業や大学からの意見を聞いてみて、「それらの間をとったらこうなりました」ということでしょうが、事態は悪化するものと考えます。
この対応策を簡単に言うと、大学3年生の10月からエントリーや説明会などが始まり、選考が4年生の春〜秋までなので、約1年間、就職活動が続く。この状況が大学生活に支障を来たしているので、就職活動の期間となっている1年間を10カ月間に短縮しようということです。
これで誰が喜ぶかというと、その2カ月間は学生が授業に出てくるようになって格好がつく大学関係者と、放っておいても学生が集まってくるので採用時期がどうなろうと大して関係のない大企業の人事部です。就職活動の主役であり、最も支援してあげるべき学生たちにとってはどうでしょうか。
就職活動の期間が短くなると、会社説明会や面接・選考へ参加する機会が減ることになるので、今よりも就職できるかどうかという不安が増すことになります。少ない機会は大企業や憧れの企業への応募に割かれてしまい、知られざるいい会社や中小企業の情報を得ることがないままに時間ばかりが過ぎてしまう学生が増えます。
人気企業に今よりも応募が集中する上に、ほかの企業にチャレンジする期間を短くするのですから、内定が取れない学生が増える(中小企業の採用難がさらに進む)可能性があります。日本経団連も、当然そうなることは分かっているので、2カ月という実に中途半端な短縮にして、大きな影響が出ることを避けたのでしょう。
「就職活動の長期化」を問題にすることが、そもそもの間違いです。だから、今回のように単なる期間短縮がその対策になってしまいます。
就職活動がなぜ長期化したかというと、「大手だから、●●業界だから」という動機だけで就職先を決める学生が、非常に増えているからです。その結果として、大企業でも短期間では十分に満足できる採用ができにくくなって(大きいとか業界とかだけを志望動機とする学生が増えて困っている)、夏採用、秋採用と継続せざるを得なくなり、また、中小企業も大手が終わってからでないと採用活動を始められない状態になっています(学生の大手志向が強まっているので、集まらないし、辞退を考えると内定も出せない)。
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