コラム
» 2011年04月27日 05時26分 公開

南相馬市、原発20キロ圏内に入る(後編)東日本大震災ルポ・被災地を歩く(3/4 ページ)

[渋井哲也,Business Media 誠]

1人で宣伝カーを仕立てて、東電本社に行ってきた

 村田さんは、放射能の不安について次のように述べた。

 「ここに来るにしても、『20キロ圏立ち入り禁止』になっているんで、お巡りさんに聞かれるけど自分の責任。お巡りさんもそれ以上は止められない。しかし、命令という形になると、今度、入ってこれなくなる。その段階になると困る。正直言って、見えないものだから」

 従業員の小林さんも「何とも言えない」とだけ答えた。吉沢さんも20キロ圏に入るときに警察に止められたという。

 「検問のお巡りさんが『通常の1000万倍だぞ』と。牛が大事か、自分の命が大事か、ということで止められたけど、自己責任で牛のエサをやるということでね、通してもらった」

 入り口付近にあった「決死救命!」の文字は何だったのだろうかと聞いてみようと思ったが、私から聞く前に話してくれた。どうやらあの文字を掲げて、東電本社に行ってきたのだという。

 「東電、国に、大損害をきっちり穴埋めしてもらいたい。この前1人で、宣伝カー仕立てて、東電本社に行ったんですよ。『うちは、福島のベコ屋です』と言って、通してもらった。総務課の主任さんが出て来て話をみんなメモしてもらった。私の話を聞いて、泣き出しちゃってね。被害の償いについてと、死ぬ気で特攻かけて、原子炉に水をかけてくれと。死んだってしゃあないじゃないかと、気合いを入れさせてね。思いは東電には伝わったと思う。そのあと、タイミングだと思うけど、放水車が出てきた」(吉沢さん)

エム牧場浪江農場の吉沢農業長

 避難指示に従う/従わないとか、20キロ圏内で仕事をする/しないというレベルの危機感ではない。もし、牛が死んだら、農場が続けられず生活が困窮する。これまでの何十年の苦労が水の泡になる。「単なる補償問題では済まされない」という必死さが、直談判までさせたのだ。

 「電気の無駄遣いをしすぎだよ、東京なんてものは。あんだけ明かりをつけてさ。こっちは電気も来ねえ、放射能におびえてるのにさ。東京に行ってみれば、有楽町や銀座なんて、なんちゅーことないね。いつも通りだ。電車が来ないくらいで騒ぐなと。電気がこない生活を味わってもらってさ、福島県の電力供給を感謝してもらわないと、あわないよね。こんなになるとは思わなかったな」(吉沢さん)

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