入社し、始めの3年間にするべき4つのこと吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年08月19日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

会社のからくりを理解

 2の「会社のからくりをある程度、心得る」だが、わずか3年で会社の仕組みをすべて理解することは難しい。たぶん50歳にもなっても、完璧には分からないだろう。この時期は「ある程度」で構わない。それは、主に次のようなものだ。「上司と部下の関係」「上司の心理(防衛本能)」「人事評価のダブルスタンダード」など。つまり、自分の損得に直結していることだ。

 会社のからくりをテーマにしたビジネス書を読むと、営業部や総務部、工場などの部署ごとの説明に終始したものが目立つ。私は、あれはナンセンスと思う。そもそも、職場が人間社会である以上、あくまで人間の心、つまり上司などの心理に目を付けつつ、組織をとらえていくべきだ。

 その場合の上司の心理とは「上司と部下の関係」のベースにあるものだ。これは、上司の防衛本能と置き換えることができる。防衛本能とは、上司が「自らの立場やメンツを守りたい」と強く思っている心理と言える。これを見抜けば、おのずと部下は何を発言し、どう行動を取ればいいのかが分かる。要は、上司は常に自分が正しく、常に自分中心で組織を動かしていたいのだ。

 ここまで読むと、敏感な人は察知するだろう。上司は当然、部下を査定評価するが、それはあくまでその上司の基準(ものさし)で評価する。人事部が作る考課表もまた基準である。だが、上司がその評価項目に書く時には、自分が見てきた日々の評価を最優先させる。これが、「人事評価のダブルスタンダード」と言われるものだ。

 例えば、営業部の課長があなたのことを「協調性がなく、スタンドプレーが行き過ぎ」と観察していたとしよう。そして半年後に、人事評価をする日がきた。その際、人事評価に「協調性」という項目がなかったとしても、課長はどこかの欄に「協調性がなく、スタンドプレーが行き過ぎ」といった意味合いのことを書く可能性が高い。こうなると人事部が作った基準と上司の基準、つまりダブルスタンダードが存在することになる。

 どちらが優先されるか。それはほぼ間違いなく、上司の評価である。人事部が上司の評価に疑問を感じたからといって、それを「書き直せ」と指示する可能性は相当に低い。私は、そんな話を1度も聞いたことがない。つまり、上司はあなたを生かすことも殺すこともできるのだ。このからくりは、心得ておきたい。

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