「タバコ1箱、700円」……軽すぎる&耐えられない閣僚の言葉相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年09月15日 21時20分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 まず、安住財務相の言葉を借りるまでもなく、タバコの価格や税を所管するのは財務省だ。

 “健康増進”を所管する厚労相とはいえ、公式会見の場でこれに触れたのはいただけない。いきなり他省のなわばりに踏み込むのは、閣僚として明確なルール違反だ。

 また、新内閣は東日本大震災の復興財源問題に直面している。増税路線の野田首相でさえ、税に関する議論には慎重に言葉を選ぶなど、非常にデリケートな問題なのだ。

 小宮山氏が“嫌煙運動に熱心”という立場は理解できるが、新内閣が直面している重要課題を、内閣の一員として全く理解できていないとの印象を筆者や多くの読者、視聴者に植え付けてしまった。

 加えて、毎年秋口からは税に関する話題は永田町、霞が関では慎重に言葉を選ばねばならない時期に当たる。タバコの価格や税についても同様であり、まして先の発言は政府税調の議論スタートの直前でもあった。

 年末の税制改正に向け、国会や財務省周辺には陳情を繰り返す業界団体やロビイストが溢れる。少しでも自らの業界に有利な方向へ税制が変わるよう、壮絶な駆け引きが繰り返される。当然、政治家は財務省とともにその渦の真ん中に置かれるのだ。

 一年生議員ならいざしらず、大臣がこの程度の知識を持ち合わせていないのかとのネガティブな印象を筆者は抱いた。

政治主導の落とし穴

 「個人的見解というよりは厚労省を代表して申し上げた意見だ」

 もう一度、小宮山氏の発言をみてみよう。

 確かに厚労省は2009年3月にまとめた「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」の中で、今後の課題として「たばこ価格・たばこ税の引上げによる喫煙率低下の実現に向けて引き続き努力することが必要」との文言を盛り込んでいる。

 6日の「厚労省を代表して」という言葉に食い違いはない。ただ、「唐突に(報告書を)持ち出された感が強い。予算編成を控えた時期に、財務省に余計な気配りをせざるを得ない」(中堅幹部)と同省関係者は戸惑いを隠せない。

 「あえて突発的な発言を行い、省庁間の摩擦を起こして世間の耳目を集める。裏では当事者同士の話し合いで落とし所が決まっている」(財務省OB)――。

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