ホワイトハウス・コンサートから文化ビジネスの突破口を探る郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2012年03月08日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

文化を軸にからめるビジネス戦略

 文化ビジネス国家の象徴はハリウッドである。

 20世紀初頭、東部から映画人が流れ着いて始まった映画村は、撮影所が開かれた後、映画館やホテル、道路の建設が続いた。インフラが整備され、マスコミや映画ファンを増やした。第二次世界大戦後にテレビが普及して「映画はすたれる」とささやかれたが、テレビスタジオを映画村に招き、テレビも“映画の配給先”にしていくしたたかさも見せた。近年ではシネコン+ショッピングモールというワンストップ施設も開発した。

 映画ストーリーでは“ハリウッド型”とも言われる勧善懲悪、恋愛もの、アクションヒーローが世界を征服した。七人の侍もゴジラもハリー・ポッターも受け入れて消化する文化胃袋もすごい。アカデミー賞という自画自賛大会も編み出した。『トイ・ストーリー』『アバター』に代表されるCGアニメは、日本の手描きアニメを越えたとも言われる。3D映画もやがてフツーになるだろう。

 インフラ投資、シナリオマーケティング、新製品や新技術導入、楽しみ方の徹底分析。米国は「文化を軸にからめるビジネス戦略」が強みである。

日本にも文化戦略時代があったのに

 日本の文化ビジネスにも華やかな時代があった。

 1970〜80年代、米国の文化戦略に気付いた西武百貨店や東急グループは「文化発信カンパニー」になろうとした。池袋西武に美術館が生まれ、渋谷に東急ハンズが創業された。ソニーは米国のレコード会社と映画会社を買収。だが、バブルがはじけた1990年代後半、赤字を垂れ流す文化事業はビジネスの鬼っ子になってしまった。

 京都には松竹や東映の映画村があるが、残念ながらハリウッドには及ばない。国立能楽堂は日本びいき以外には広がっていない。宝塚歌劇団の海外公演はある程度成功しているようだが(外部リンク)、どこまで多くの人を引き付けられるだろうか? また、AKB48もアジアへの輸出が始まったが、果たして“純粋な日本文化”だろうか?

 日本の文化発信には、“モノづくり”や“モノ売り”が軸にあった。通信・家庭電気用品などを扱う弱電メーカーはハードを売りたい、流通会社はモノを買わせたい。一方、米国は町を作り、流通システムを構築し、技術を発明し、世界に輸出する。これでは勝てっこない。

 では、日本の文化ビジネスはもうダメなのか? いや、そんなことはない。“ロールモデル(お手本)”をキーに考えてみよう。

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