「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
先週、ある家電量販店のオンラインショップについて書いた。利用してみたところ、ネット時代に何ともふさわしくない店のあり方にがっかりしたからである。アマゾンをよく利用している者から見れば、天と地ほどの違いがある。そして注文していたものが届いた。その顛末もまたちょっとお粗末なので、簡単に報告する。
先週月曜日(3月12日)、コラムが掲載された日に偶然にもそのショップから連絡メールが入った。「注文していた商品の入荷が遅れて、3月末になる」というのである。ほぼ1カ月も待たされるのかと思っていたら、何と3月16日に「発送した」とまたメールが来た。そして3月17日に商品が届いた。結果としては月末より早く届いたのだから文句を言う筋合いはないかもしれないが、この情報の混乱ぶりはどうだろう。
こういった情報をいかに一元管理するかがネット社会の基本のはず。入荷予定と出荷予定がきちんとリンクされていれば、半月も予定が狂うことはありえないと思う。きっとこのショップではそういった「基本」ができていないのだろうと推測する。
残念ながら、日本は情報に対する感度ではどうひいき目に見ても、先進国ではない。先日もそれを実感するようなことを聞いた。東京電力福島第一原発の事故に関する国会事故調を取材に行った時である。その日、参考人として呼ばれていたのは、事故当時、東電の副社長だった武藤栄氏だ。1年前に記者会見していた武藤氏とは別人かと思うぐらいよどみなく質問に答えていた。
一瞬、我が耳を疑ったのは、当時の菅首相が福島第一原発に飛んだ日のくだりだった。現場を見に行くと言い張る菅首相が福島第一原発にヘリで飛んだのは3月12日早朝である。この時、武藤氏も福島第一原発に行った(前日の事故当時は本店から福島第二原発のオフサイトセンターに移動していたが、菅首相が来ると聞いて、福島第一原発に向かった)。
そして菅首相は、福島第一原発の吉田所長(当時)と話し、彼の携帯電話の番号を聞いたのだと武藤氏は証言した。さらに、2人の間でその後どのような会話が交わされたのかは承知していないとも語ったのである。
およそ国の最高指揮官である首相が、いかに原発の情報が少ないことにいら立ったとしても、現場に飛んでいくなど、軽挙妄動のそしりを免れない。さらに官邸に戻ってから、現場の所長の携帯に直接電話をして何らかの情報を取ったということなのだろう。東電本店の情報のあいまいさに怒る首相が「現場はこう言ってるんだ」と怒鳴る姿が目に浮かぶようである。
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