「青春18きっぷ」廃止の噂はなぜ起きたか杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

» 2012年03月30日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

安すぎるからなくなる?

「青春18きっぷが安すぎる」は同感で、だからこそ売れている。しかし、青春18きっぷの発売期間は新幹線や特急列車が増発されており、満席となる列車も多い。つまり、この時期は旅客全体が増えている。「青春18きっぷのせいで定期特急列車まで空席になる」と言うなら弊害だ。しかし報道や利用実績のプレスリリースからはその傾向が見えない。むしろ、鉄道から格安ツアーバスなどへ流出する顧客を、青春18きっぷが食い止めているかもしれない。まあ、これも憶測ではあるが。

 ツアーバスと言えば、ある大手ツアーバス会社の社長が「私たちは既存の交通機関と競合したいわけではない。新規需要を開拓したと思っている」と発言していた。「この値段なら出かけよう」という隠れた需要があったとのこと。それを言うなら、「青春18きっぷがあるから列車に乗ろう」という人だって多いはずだ。本当に安すぎて問題だと言うなら、企業が選択する解決は「廃止」ではなく「値上げ」である。避けてほしいけれど。

旅客集中で苦情が出ている

 青春18きっぷの時期だけ旅客が集中する列車は実在する。SL列車や展望席付きの観光列車もそうだが、こちらはもとより旅客増を狙っているので苦情は出ない。むしろ混雑すれば成功である。問題は、夜行快速の終着駅から接続する各駅停車や、運行本数が少ない地方幹線の普通列車などだ。ふだんの需要に合わせたダイヤ、車両編成数のままだから、確かに混雑する。いつも利用している客からのクレームはあるかもしれない。

 しかし、これも青春18きっぷのせいではなく、需要予測を誤っているからだ。車両の手配ミスか、あるいは、混雑してもまだ許容範囲、という判断があるのだろう。混雑対策なら、青春18きっぷの廃止ではなく、列車の増発や増結であろう。

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