スマホの普及&テレビ離れで、戦後最大のメディアイス取りゲームが始まっている遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(3/4 ページ)

» 2012年04月11日 18時29分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

ライフスタイルを変える?「テレビがどうなるか問題」

 テレビというものは、「家の中で一番よいポジションにあるスクリーンのこと」と定義することもできるだろう。その意味において、この「テレビがどうなるかという問題」は、メディアだけでなくライフスタイル全体に大きな影響をおよぼす可能性がある。

 アスキー総合研究所では、1万人規模の消費者動向調査「Media&Contents Survey」の2012年版の提供を開始した。この調査は今年で3年目。我々が、この事業に参入するにあたって絶対の自信を持つ「ネット」と「コンテンツ」の2つの分野にとくに注力したものだ。おかげさまで、ネット時代の人々の意思決定や商品の購入動機がどのように変化してきているかを知るツールとして、高い評価をいただいている。

 集計結果を見て驚かされるのは、ここ1年間のメディア利用状況の激変である。1999年にiモードがスタート、2004年にGREEやmixiがサービス開始、2006年にニコニコ動画、2008年にiPhoneが日本で発売と、我々を取り巻くメディアは、この5〜10年で大きく変化してきてはいた。しかし、それを加味したうえでも、「1日のテレビの視聴時間」が152.0分(2010年末)から134.1分(2011年末)に減少したなど、劇的と言わざるを得ない。

ここ1年で加速したメディア環境の変化

 日本人1人の1日の平均テレビ視聴時間は、1950年代にテレビ放送が開始されて以来、基本的に増加してきた。1960年代には「テレビの黄金時代」があったが、まだ核家族化されておらず、個人視聴もなかった。唯一、1980年代の半ばにビデオやテレビゲームで停滞したが、その後もバブル期をはさんで視聴時間は伸び続けた。ここ数年の総務省統計では横ばい、一部で減少も指摘されていたが、ここまで大幅な減少ではなかった。

 テレビだけではない、「PCからの1日のネット利用時間」も、この1年間で173.5分から151.4分へと大幅減少。これは、1995年頃からひたすら発展してきたインターネットの歴史の中でも大きな転換点といえる。一方、携帯電話(スマートフォンを除く)も、2010年から2011年にかけては所有率が88.3%から80.3%へと減少。これも、1990年代に一般に普及が加速してから、初めての減少といえる。

昨年から今年で、デバイスの利用はこんなに変わった

 そうした中で大きく伸びたのはやはりスマートフォンで、所有率は4.9%から13.1%へと167.3%も増加した。タブレットも、数値は小さいとはいえ、1.0%から2.1%へ増加。こうしたメディア機器に加えて、新聞などの紙媒体、ラジオやゲーム機などすでに減少傾向のあったものも含めて、それぞれの10%〜20%が同時多発的に流動しているようすを想像してみていただきたい。消費者の限られた時間やお金やメンタルな部分で、壮大なイス取りゲームが行われているのだ。

 その理由としては、「3月11日の東日本大震災」「2011年7月24日の地上アナログ放送の停波」「2000万台以上のスマートフォンの国内出荷」「ソーシャルメディア利用者の数百万人増加」といったことが考えられる。これら滅多にない出来事が複合的に作用して、戦後最大といっても恐らく差し支えない規模の、メディア状況の変化が生じているのだ。

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