あえて現地に放り出す? 鉄道ツアーの仕掛け杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2012年06月15日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

「おひとりさま」の鉄道ファンだからできる

 旅行会社が募集するパックツアーは、集合場所から出発して、その集合場所に戻ってくる。何しろ私たちは「おうちに帰るまでが遠足ですよ」と教育されている。団体旅行はスタート地点に戻る。それがセオリーだ。旅行会社にしたって、乗車券の利幅は小さいとはいえ、往復で売りたいだろうし、帰りのきっぷの売り上げも重要なはずだ。

 現地解散、実はこれも「おひとりさま」の雰囲気を醸し出す工夫だ。鉄道ファンは自分で日程を立てられるから、現地で解散しても、自分の裁量で帰宅できる。往路でテーマに沿った旅を提供すれば、その先は参加者ひとりひとりの旅が始まる。いや、参加者から見ると、もともと自分自身の旅があって「鉄道ツアー」はその中の「イベントのひとつ」ともいえる。

 「おひとりさま=バラバラに行動するというわけではない」と日本旅行の担当者はいう。見知らぬ人同士が集まっているといっても、「鉄道好き」という共通点があるから、他のツアーに比べると「よそよそしさ」がない。撮り鉄が線路用地や線路付近の個人所有地に立ち入るなど、鉄道ファンのマナーが取りざたされている。しかし、ツアー参加者は乗って楽しむ人が多く、撮り鉄は多くない。

 「そもそも、事故や緊急停止が報じられるから目立つだけで、鉄道ファン自体はおとなしい人が多い。ツアーに参加する鉄道ファンは乗り鉄のほうが多い」という。他の一般観光ツアーと比較しても、鉄道ツアーはトラブルが起きにくいそうだ。「さよなら列車ツアー」の場合は、途中の駅で小一時間の撮影タイムを設ける。1号車の半分から順に、5分の持ち時間で交代して……といった感じで。そこで団体旅行方式の秩序が生きてくる。

写真左は「ひたちなか海浜鉄道の旅」。第2弾は那珂湊駅であんこう鍋を用意、写真右は日本旅行の矢嶋敏朗広報室長(左)と新規事業室鉄道プロジェクトの瀬端浩之マネージャー(右)

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