そんな鉄道ファンと「現地解散スタイル」に、鉄道会社と沿線の地方自治体が注目している。現地解散ののち、参加者はさらに鉄道会社やその周辺でお金を使ってくれるからだ。前出の「ひたちなか海浜鉄道 車両清掃応援と営業再開1番列車の旅」の場合、現地解散は16時。もちろんすぐに上野行き特急列車に乗る人も多い。しかし、何人かは「おさかな市場」など観光スポットに足を伸ばす。1泊して大洗水族館へ向かったり、ひたちなか海浜公園へ遊びに行ったりする。また現地で夕食を食べ、おみやげを買う人もいる。
ひたちなか海浜鉄道は東日本大震災で被災した。周辺も被災した。そこに観光という形でお金を払ってくれる。被災地見学という堅い形式ではない。鉄道ファンが鉄道を体験するという、趣味的に純粋な目的でやってくる。だから悲壮感もない。彼らはお金だけではなく、笑顔も持って来てくれた。
ひたちなか海浜鉄道の旅は、当初は鉄道復旧を応援しようという趣旨で企画された。しかし土木工事は危険で参加させるわけにはいかない。そこで「せめて車両を掃除してきれいにしよう」となった。「ひたちなか海浜鉄道さんがとても喜んで、せっかくだから、ツアー参加者を1区間だけでも乗せてあげたいと」(日本旅行)。
しかしそこにも壁があった。試運転の列車にお客さんを乗せるわけにはいかない。そこで逆転の発想が生まれる。ひたちなか海浜鉄道から「ツアーの日を、営業再開日にしましょう」という提案があった。そこでツアータイトルに「営業再開1番列車の旅」の文字が追加された。
このツアーは話題となり、日本旅行にもひたちなか海浜鉄道にも大きな宣伝効果となった。さらにひたちなか海浜鉄道は、運行再開を記念して配布した乗車記念票のうち、1番から始まる若い番号をツアー参加者に割り当ててくれた。
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