覚田 覚田です。田代さんは、おられますか。
ホテル はい、田代です。覚田さまですね。お電話、お待ちしておりました。実は、今朝、キャンセルが出ておりまして。しかも、覚田さまの希望していた部屋が。
覚田 それは、よかったあ。
ホテル キャンセル待ちをしておりませんので、こちらからお電話をすることができませんでしたが、お電話をいただき、うれしゅうございます。いかがなされますか。
覚田 田代さん、ありがとう。もちろん予約させてもらいますよ。
……この方法が100%成功するわけではないと思うが、この3度の予約電話作戦には戦略的にたくさんの示唆(しさ)がある。
結局、円滑な仕事をするためには、相手を味方に付けろということである。自分の情報や状況を、何度かに分けて伝えて共有する過程で、自分の達成するべき目標を相手にも共有してもらう。クライアントと対峙するのでなく巻き込み、同じ方向を向くようにする。よく言われる話であるが、「戦略」とは、文字通り「戦いを略す」こと。戦うのではなく、いつのまにか、相手が味方になっていること。そのためには、巻き込むステップに合わせて、1つの電話やメールをおろそかにしないことが肝心なのである。
前述のペンシルの覚田社長は、特に仕事の依頼を受けた直後の1本の簡単なメールが大事だという。次の仕事のアクションを事前に伝える1行のメールが、その仕事の正否を分けるという。
その1行のメールには、「次のこのタイミングに、こうしたい」ということを書き込む。要は、クライアントとステップを共有する意志を示すのだ。巻き込む&味方にするための一番の方法は、相互にバラバラに流れている「時間」を1つにすること。仕事のスタートと途中と終わりを共有することが、他人を味方にする最良の方法なのである。
「時間」は流れている。しかし、その流れるスピードは、同じように見えて違う。その人の能力や環境によって、ことごとく違う。そのスピード感の違いが、仕事に大きな支障を産む原因になる。だから、スタートから終わりまでの「時間のステップ」を意識し共有することが、円滑な仕事の進行には大事なのである。
大晦日に、彼女と魅惑的な花火をスイートルームで満喫する。その刹那的な時間のために、数週間前から、予約担当者を味方に付けるためのステップマネージメントを実行する。これが、不発で終わらない男になるための秘術である。(中村修治)
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