中国高速鉄道で、また事故が起きるかもしれない杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

» 2012年08月03日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

「パクリ新幹線」と笑うな

 中国高速鉄道については、この事故の約1カ月前に高速車両「CRH380A」に関する技術について、国際特許を出願すると報じられた。CRH380Aは、日本の技術供与で作られた「CRH2」にドイツや中国独自の技術を組み合わせ発展させた形式という。CRH2はJR東日本の新幹線E2系をベースに作られている。この報道に関して、日本のマスコミや世論は「中国が日本の新幹線技術を盗んだ」と騒ぎになった。

 その話題で温まっているところに、あの高速鉄道事故が起きた。停止中の列車は「CRH1」で、これはドイツのボンバルディア・トランスポーテーション社の技術を基礎として作られた。そこに追突して落下・宙吊りとなった列車は「CRH2E」、まさにJR東日本E2系ベースの寝台車両で、北京行の夜行特急として運行されていた。

 これが日本では「中国パクリ新幹線事故」とはやし立てられた。尊い命が犠牲となっている中で、一部マスコミの「盗っ人ざまあみろ」というような心無い論調が散見された。これについては今も胸が痛む。

 そもそも、中国は技術を盗んではいない。日本を始めとする諸外国の鉄道車両製造会社が納得ずくで技術を提供した経緯がある。日本の新幹線を輸出する時に、技術供与が条件となっていた。そして2004年に川崎重工と中国の青島四方機車車輛が技術提携する。この話が持ち上がった時、中国に技術を持っていかれることは予測できた。国内でもその可否が論議され、台湾新幹線に協力したJR東海は手を引いてしまう。

 あのときに議論がつくされ、川崎重工とJR東日本は納得ずくで技術を供与した。中国の国際特許なぞ想定できたはずだ。屈辱的だけど、日本は中国に技術をさし上げたのだ。なので一部マスコミの報道については「なにをいまさら」という印象である。

CRH2型のベースとなったJR東日本E2系電車

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