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» 2012年09月11日 08時00分 公開

出版物の3冊に1冊を占めるけど……危機を迎える日本のマンガ(前編)アニメビジネスの今(2/4 ページ)

[増田弘道,Business Media 誠]

なぜ日本はマンガ大国になったのか

 では、なぜ日本がこのようなマンガ大国になったのだろうか。いくつかの理由が考えられるが、筆者は次の5つを挙げたい。

1.絵画文化の土壌

2.手塚治虫の出現

3.大手出版社の参入

4.マンガ雑誌の存在

5.アニメとの相乗効果

1.絵画文化の土壌

 日本では古くから絵巻物などで画と文字(ストーリー)を並立させるといった文化的伝統があり、『鳥獣戯画』などはすでにマンガそのものと言ってもいい表現となっている。光と影が特徴的な西洋絵画とは異なり、輪郭線で形状を描こうとする文化は浮世絵を経てマンガに結実したものと思われる。

2.手塚治虫の出現

 1人の天才によって文化が築かれるという事実を手塚治虫に見ることは決して間違いではない。手塚治虫の革新性やインパクトは、アニメーションにおけるディズニーと同じく「before手塚、after手塚」と言われるほど大きいものがある。

 詳しくはテレビアニメ50周年となる来年に向けて書こうと思っているが、マンガ史において手塚が果たした役割はあまりにも大き過ぎ、いまだに整理しきれないこともあり真っ当な評価が与えられていない。1989年に手塚が亡くなった時に国民栄誉賞が与えられなかったのは、極めて残念なことであったと感じる。

3.大手出版社の参入

 日本以外の国々でコミック市場がそれほど大きくない理由の1つに、大手出版社の参入がなかったことが挙げられる。アメコミのDCコミックやマーベルコミックはいずれもコミック専門会社で、売上的にもマンガを出版している日本の大手出版社の半分以下の規模である。

 それに対し、日本では戦前から最大手の講談社が積極的に漫画に取り組み、戦後は小学館や集英社などの大手も参画するようになった。これによって、世界に類を見ないチャレンジであるマンガ雑誌が出版され、大手出版社の優秀な編集人材と相まってマンガ産業が盛んになったのである。

4.マンガ雑誌の存在

 日本人ならマンガ雑誌はあって当たり前と感じるかもしれないが、実はこれも世界的に見ると非常にユニークな形態だ。つまり、いくつもの連載マンガをまとめて雑誌にしている国は日本以外には見当たらなかった(現在は日本のマンガ雑誌を真似た国が現れているが)。このマンガ雑誌の出現によって、マンガ家の育成、作品マーケティング、ビジネスが一度に行えるようになり副産物のコミックを含めたマンガ産業全体のパイを増やす役割を果たせるようになったのである。

5.アニメの相乗効果

 前回記事でも述べたように、マンガとアニメは非常に密接な関係にある。それは一方的にマンガがアニメに対して原作を提供するという関係ではなく、アニメ化されることで大きなフィードバックがもたらされている。有り体に言えば、アニメ化されるとよほどの失敗作でない限り、原作マンガが売れるということだ。大ベストセラーでこれ以上部数が伸びないと思われるマンガであっても、アニメ化されるとさらに売り上げが伸びるのである。そういう意味でアニメはマンガの持つ世界を増幅させるプロモート的な役割も担っているのである。

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