内容が良いだけじゃダメ、出版界が模索する販促方法とはビジネスノベル新世紀(2/4 ページ)

» 2012年09月17日 08時00分 公開
[渡辺聡,Business Media 誠]

固定需要を取り込む

 年々減っていく販売部数、最近は書店も減りつつある中、出版社の願いはシンプルです。「何とかして本が売れないものか。目に付いて手に取ってもらえないものか」。「売れるためなら何でもトライする」という空気が各所で強くなりました。

 全体として需要が減って、まず目立つようになったのが、手堅い需要を持ったジャンルの存在感が増し、評価が高まっていることです。

 例えば、音楽ではセールスランキングの上位にアニメソングが入ってくることが増えました。略称のアニソンというフレーズもごく普通にメディアでも見るようになり、随分と市民権を得た感があります。書籍でも、女性向けのアダルトを含めた恋愛ものが販売数や店頭での存在感を高めています。宝塚やジャニーズ系のアイドル需要など、類縁のモデルは以前から根強くありましたが、ここにきて大手出版社での新しいレーベルの立ち上げなど商品開発が進められています。この動きはコンテンツ分野に限ったことではありません。

 可処分所得のセグメント動向を見ると、独身、フルタイムあるいはそれに近い就業、さらには親と同居している女性というパターンがシニア層と並んでお金を落とす層になっています。

 飲食分野だと、ちょっと高めのイタリアンやおしゃれな作りのカフェなど、ランチの単価で1000円強の店になると、20〜30代の女性客の割合が顕著に高くなります。これは彼女たちが好むスタイルということももちろんありますが、それだけ支払える余力を持っていることが大きいのは言うまでもありません。

 先に触れたアニソン分野もそうですが、いわゆるオタク、サブカルと言われるものが市民権、社会的な理解を得られる傾向が出ています。“鉄”と略される鉄道マニアにしても、移動して消費してグッズも買って、とコンテンツに限らない多様な需要につながることから、これらサブカル系の需要層は、背に腹は代えられないという段階から、ありがたいお客さんとして認知されるようになってきています。

 変化を大きく感じ取れるのは、地方の町おこし系の動きで、キャラクターを独自に作ったり、萌えグッズを出してみたり、作品制作の舞台モデルになったことを観光需要につなげたりと、手法論の学習共有が研究者や役所の担当の間で交わされることも多くなりました。

注文が殺到したというJAうご産あきたこまち

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