困っていない人には手を差し伸べない――この考えは間違い佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係(最終回)(2/3 ページ)

» 2012年09月29日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
佐々木俊尚

佐々木:米国ではクラウドファンディングで本を作って売るスタイルが、既に業界第2位になっている、と聞いたことがあります。本を書く前に「この本を○月に出しますから、いくら投資してください」として、高い値段を出してくれた人には、イベントに参加できたり、サイン入り本を手にできたりする。それでかなりの額のお金が集まるそうです。

松井:あと電子書籍だと割り切ってしまえば、資本なんてほとんどいらない。

佐々木:コンテンツをPDFで作れば終わりですから。

松井:で、PayPalみたいな仕組みがあれば、簡単ですよね。

佐々木:そういう仕組みを利用して、ビジネスをどんどんやっていけばいいんですよ。

包摂する仕組みを考えること

松井:親しくしている人の弟さんで、35歳過ぎてから失業をきっかけに引きこもりになってしまった人がいます。しばらくは派遣などの仕事をしていました。しかし将来に希望が持てないせいか、最近は仕事を探す気配さえありません。

 厳しいことを言えば、彼にはこれといった特技がありません。「私がしてやれることはないかな?」とよく考えます。しかしいろいろなアイデアを出しても、「それは無理、それはやりたくない」と消極的でした。今からでも遅くないいから、彼はがんばって、何か特技を見つけるべきではないのか? 自分のウリがあれば、どうにかなるのではないか? 正社員になれなくても、自分のスキルを売る方法があるのではないか? ……そんなふうに考えています。でもいい歳した大人に強制なんてできません。

佐々木:別に超エリートである必要はないんですよね。何かできればいくらでも可能性はある。そのくらいのことは考えてくださいよ、ということですよね。

松井:ですね。

佐々木:何もしないで、「できない、できない」と言っていてもしょうがないですから。

松井:彼は友だちの付き合いも狭く、気持ちも内向的で……。

佐々木:そういう人を包摂する仕組みを考えることは、実は非常に重要です。その一方で、世の中がこういう風になってきて、とりあえず自分で生き延びられる人は自分で生き延びましょうということは、実は次元が違うんですよね。

 困っている人たちを助けなければいけないから、自分で何とかする人を否定するというのは間違い。両方やらなくてはいけないんです。

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