なぜ日ハムは優勝できたのか? 新米監督・栗山英樹の人心掌握術臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/5 ページ)

» 2012年10月10日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

「スポ根ドラマ」も顔負けの人心掌握術

 その覚悟は間違いなくナインに伝わった。たとえ失敗しても起用し続けてくれれば、どんな選手だって意気に感じる。9月27日のロッテ戦で今季ホールド王(最優秀中継ぎ投手)を確定させた増井は、ヒーローインタビューで「ホールドがつくような場面で投げさせてくれた監督、コーチに感謝します」と照れ臭そうにコメント。すると、それをベンチで聞いていた栗山監督が思わず涙……。こんな「スポ根ドラマ」も顔負けのようなシーンは、シーズン中も随所で見られた。

 試合前のチーム練習で栗山監督は打撃ケージの裏やベンチ、そして内外野とグラウンド中を奔走。選手だけでなく他の首脳陣、裏方に至るまでチームのスタッフ全員に声をかけることを欠かさなかった。担当コーチの話には「オレは現場スタッフの経験がないから」と謙虚に耳を傾け、納得がいくまで議論を重ねた。

「一人ひとりと顔を向き合わせてくまなく話を聞き、自らも熱い思いを伝える。2011年までキャスターの仕事をしていたこともプラスになっているんだろう。相手の本音を聞きだすことは何度も経験しているし、意思の伝え方も抜群にうまい。『この一球に命をかけてくれ!』とか『野球の神さまがお前についている!』などと臭いセリフを恥ずかしげもなく口にして選手たちを鼓舞する。まるで熱血教師のようにね。『元気か?』と言ってもらえた控え選手たちだって『お、今日は出番があるかもしれないんだな』と思ってヤル気になるのは当然」(日本ハム関係者)

 もちろん「熱血」だけではない。厳しさも持ち合わせている。開幕投手に任命した斎藤佑樹が不振に陥ると、有無を言わさず2カ月間もの二軍調整を命じた。当初は「斎藤は20点取られても変えない。アイツには勝敗を背負わせてもっと自覚を持たせる」といって2年目の発奮を促したものの、シーズン中盤にスランプにはまったと見るや否や非情の通告を決断。「開幕投手とて特別扱いはしない」という厳しい姿勢をチーム内に示し、ナインを引き締めた。

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