“マル獄シリーズ”が人気、拡大する刑務所発ブランド(1/2 ページ)

» 2012年12月12日 07時00分 公開
[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 実刑判決を受けた刑事被告人が、刑務所で従事するのが「刑務作業」です。刑務作業では、家具、革靴を始め、さまざまな製品が作られています。

 しかし、昨今の不景気やグローバル化などにより、刑務所発の製品である「刑務作業品」の売れ行きが低迷。こうした状況を打破すべく、人気キャラクターを採用したり、ブランディングに取り組む刑務所が登場しています。

 長野刑務所に収監されている堀江貴文氏も、彼のメルマガを読むと、刑務作業を頑張っていることが分かります。刑務作業ではさまざまな製品作りに携わっていますが、例えば「手さげ紙袋」を作っているようです。

 刑務作業に対する報酬は熟練度によって上がっていきますが、非常に安いものです。刑務作業を始めたばかりの2012年7月の堀江氏の作業報酬は618円でした(同年9月には901円に増額しています!)。まあ、刑務作業は職業訓練を通じて、出所後の社会復帰の可能性を高めることが目的なので、報酬が少ないのは仕方がないところです。

 さて、このように人件費が極めて低いことから、刑務所発の製品は、国内メーカーのブランド品よりも半分程度の価格で販売可能。デザイン的にはいまひとつで、どうしてもネガティブなイメージがつきまとうものの、品質、安全面では大手メーカーの製品と遜色ないため一定の人気があったようです。

 ところが、刑務作業の主要な発注先である、民間の中小企業が長引く不況により倒産したり、刑務所よりも人件費の安い東南アジアに発注を移すなどしたりしたことから、刑務作業が激減。このままでは、受刑者に技術を習得させる機会がなくなってしまうと、新たな取り組みを始めた刑務所が現れているようです。

 日経ビジネス(2012年12月10日号)の記事によれば、栃木県・黒羽刑務所では、「ハローキティ」のダルマの製作に乗り出しているということ。黒羽刑務所では、もともと「黒羽だるま」を製作していたそうですが、サンリオのライセンス許可を得て「はろうきてぃだるま」の製作に着手。なかなかの人気のようです。

 黒羽刑務所では、人気キャラクターを採用することで製品の魅力を高めることに成功したというわけです。

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