選挙を終え、官僚とマスコミが“逆戻り”するかもしれない相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年12月20日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 16日の総選挙を経て、自民党政権が復活する。なによりも復権を喜んでいるのが中央官庁の官僚たちだろう。箸の上げ下げに至るような的外れな指示を出されることはもはやない。だが、個人的には官僚たちの安堵には、警戒すべきだと思っている。

 自民党には商工族や農林族など、さまざまな族議員がいる。もちろん官僚たちは自らの縄張りを守るために、族議員と密接に連携する。民主党という明確な敵がいなくなった以上、かつての自民政権時代よりもそのつながりは強固になるはずだ。

 長年の取材経験を通じ、私は多くの官僚に知り合いがいる。一人ひとりは優秀、かつ人柄の良い人が多い。だが省の利権が絡んでくると、彼らはかたくなとなり、縄張りを死守するために動き出す。極論すれば、国民のためではなく、省の利益を優先させるのが官僚の性質の1つ。霞が関と永田町の強固な絆の復活は、要警戒だ。

古い政治報道が復活

 「それ見たことか」――。

 総選挙の投開票翌日、私は旧知の大手紙政治部記者と電話で話した。すると、電話口で先のような言葉が聞こえた。

 発言の主は知り合いの記者ではなく、彼の上司である同紙幹部だ。2009年の民主政権誕生で慌てたのは霞が関の官僚とともに、大手マスコミの政治担当記者も同様だ。

 「派閥領袖の自宅で寝食を共にして、関係を密にすることこそ政治記者の仕事」――。

 私が駆け出しの経済部記者だった頃、真面目な顔でこう話すベテランの政治部記者が多数いた。政策の善し悪しを分析するのではなく、政治家にべったり張り付き、“政局”を分析するのが記者の仕事、という意味だ。

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