謎の就活用語「キチョハナ」――会社説明会を行うのは何のため?サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年02月04日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

会社説明会で「本当は」なにが行われているのか

 私は仕事柄、就活生からたくさん相談を受けますが、中には会社説明会に関するものも少なくありません。中でも多いのが「事前にエントリーシートのようなものを書かせる企業への不満」です。就活生たちは「その会社がどのような事業をしていて、自分が働きたいかどうか理解するために会社説明会に参加するのです。それなのに、それに参加するためにエントリーシートを書かせ、そこで志望動機を尋ねたりする。企業は間違っていますよね」と憤慨します。もちろん、企業は自社のリクルーティングのために特設サイトを用意し、リクナビやマイナビなどの就活情報サイトにも、自社の事業について掲載しています。そこである程度の説明をしていて、就活生たちはそれを見て会社説明会に参加すると決めているはずなのに、志望動機から書けないと。

 では、会社説明会で「サイトなどでは得られない情報」を手にすることができるのかというと、それは期待薄です。そこで紹介されることの多くは、リクルーティングサイトに既に掲載されていることであり、実際に働く従業員たちが登場することで臨場感を持たせていますが、それにしてもウェブ上によくある「先輩紹介」の域を出ません。ただし、それらからは伝わってこない「印象や雰囲気」は垣間見えます。

 多くの企業が会社説明会をなんとなく続けている理由の一つは、この部分にあるようです。仕切りのよい運営、感じの良い社員たち、そして、暖かい雰囲気。内容そのものよりも、その周辺にある言葉にしにくい「のようなもの(表現が難しいですが)」を伝えたいと考えている。動機形成という言葉を採用担当者たちは多用しますが、会社説明会はまさにその場所。ぼんやりとした興味しか持っていなかった就活生を、自社に強く興味を持たせるステップとして利用しているのです。

 前述した「会社説明会に行かないと志望動機が書けない」とぼやく就活生たちですが、もし通常のビジネスシーンで同様のことを言っている人がいたら「お前さんは馬鹿じゃないの」と叱られるはずです。読者の皆さんが採用担当者の立場になってみても「いや、そんな奴採用しないでしょう」と思うのではないでしょうか。

 しかし、採用担当者たちにしてみれば、何の問題もありません。とりあえず会社説明会に参加してくれることによって、就活生たちの動機が形成できれば良いのですから。そう考えると、いろんな言葉を文字通りに受け取って考えてしまうと混乱し、さらにビジネス社会での常識を前提にしてもスムーズにことが進まないのが新卒採用の現場なのかもしれません。自社にたいして興味を持っていない就活生が会社説明会に参加することを「うちに興味を持たないタイプの学生も参加してくれた」と、採用担当者たちは喜んでしまうのですから。

会社説明会に関する「キチョハナ」を少しだけ

 会社“説明”会という言葉が本来の意味とは逸脱しているというエピソードを、もう一つ紹介しておきましょう。

 「キチョハナ」という言葉を聞いて、ピンと来る読者の方は、就活や新卒採用周辺にかなり敏感な人でしょう。就活生たちが、ツイッターなどで「今日はキチョハナできたー」「キチョハナ聞けたのでよかった」とつぶやいているのを見たことがある、という人もいるかもしれません。キチョハナとは、「貴重な話」という言葉の略語で、本来は半角カタカナで書くようです。会社説明会の後で、採用担当者たちが「なにか質問はありませんか?」と呼びかけた際に、挙手をしてさされた学生が言う定番の台詞からきています。

キチョハナってどんな花?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.