ゼロより下、マイナスからでもはい上がりたい――川崎宗則の愚直な生き方臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)

» 2013年05月30日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

試合前の「ガンバッテイコウ」がチームに浸透

 試合で守備に就く際、川崎はまるで高校球児のようにグラブを片手にベンチから猛ダッシュで飛び出していく。「初めて見たとき、カワサキが後ろから誰かに追いかけられているのかと思った。後にそれが彼のルーチンワークだと聞いて『何てマジメな男なんだ』と再び驚かされたよ」とはギボンズ監督の弁。メジャーでは考え難い“川崎流”に目を白黒させ、その愚直さに感動すら覚えていた。

 クラブハウスにも必ず一番乗りで入り、ストレッチなどの準備を抜かりなく行う。そしてベテランや若手、そしてスタッフと分け隔てなくみずから声をかけてあいさつ。それも、そのほとんどが英語ではなく日本語だ。メジャーに昇格した当日から試合前に「ガンバッテイコウ」とチームメートたちに声をかけており、その掛け声が今ではナインの間に浸透している。

 主力のバティスタは「いきなり日本語で話しかけてきたときには驚いたけど、今はもう慣れたよ(笑)。ムネ(川崎)は英語やスペイン語がうまく喋れなくてもボディランゲージを交え、一所懸命に話すから何を伝えようとしているかが大体分かる。とてもユニークで、みんなを笑わせるムードメーカーでもあるし、最高のチームメートさ。メジャーリーガーの中には変なプライドが邪魔をして周りに溶け込もうとしないヤツがいるけれど、彼はそうじゃない。ああいう姿勢はわれわれも見習う必要性がある」。

 一流のメジャーリーガーたちが舌を巻き、そして共感を覚える驚異的な猪突猛進(ちょとつもうしん)ぶり。思えば、メジャーに挑戦した当時も川崎は尊敬するイチロー(現ヤンキース)の存在を追ってマリナーズへ入団した。

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