ソフトバンクホークスでは絶対的なリードオフマンに君臨しながらも2011年のオフ、FA宣言して「イチローさんと同じチームでプレーすることだけを希望しています」とマリナーズを逆指名。ソフトバンクの慰留を振り切って、マリナーズ入団にこぎつけた。しかしサインを交わしたのはマイナー契約。ソフトバンクに残留していれば推定年俸3億円の好条件でレギュラーの座も確約されていたが、川崎は夢を追い求めてあえてイバラの道を選んだ。
「もともとメジャー志向が高かった川崎を早くから調査するメジャー球団はマリナーズを含めて複数あったが、その評価は決して高くなかった。『内野手のバックアップならばマイナー契約で獲得を検討してもいい』というのが、リストアップしたマリナーズなどの各球団の答えだった」(メジャー関係者)
控えの内野手に好条件を提示するメジャーの球団はない。控え野手の年俸相場は高くても150万ドル(約1億5000万円)。メジャーに昇格できなければ最低保障の40万ドル(約4000万円)にも満たない。立場が保障されない以上、どの球団でプレーしても同じ。川崎は代理人に「控えでしかオファーがないのならば、いっそのこと憧れのイチローさんと一緒にプレーしたい。マイナーで構わないからマリナーズと話をまとめてほしい」と伝えた。
日本のトッププレーヤーだった男が、こんな低い条件を提示されて首を縦に振るわけがない。おそらく、そう思っていたのだろう。驚いた代理人は「マイナー契約で本当にいいのか」と何度も再確認を求め、ソフトバンク残留も視野に入れるように促した。
だが、それでも川崎の決意は変わらない。「(ソフトバンクに)残留すれば、確かにラクかもしれない。でも、もっともっと苦しんであがいて、ゼロより下、マイナスの位置からはい上がってみたい。人間はあがかなくなって、ラクしようとしたら終わり。『メジャー』という上の世界があるならば、そこに昇格してとことん上を目指したい。そして、もっと成長したい」と強い口調で言い放ったという。
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