なぜ就活生はバイト経験をアピールし、人事はそれを無視するのかサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年09月23日 10時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

学生アルバイトは学業の妨げになってはならない

 当時の学生アルバイトについて、ある教授は「学業や研究の増進に奉仕するならばいいし、それが学生アルバイトの適職ではないか」と述べています。生活のためにアルバイトをすることは仕方ないが、本来なら学生の本分である学業の延長線上にある仕事を学生アルバイトとしてやるべきだし、それが斡旋されるべきだと。ただ、それはなかなか難しいと書いてある通り、54年たった現在でも、学生アルバイトは、学業の増進になるものにはなっていません。

 一方、学生の立場で学生アルバイト委員会に参加していた人は「通常の就職でさえ高倍率なのにアルバイトにありつくなんて無理だった」とこぼしながら回顧しています。現代は、「正社員の仕事はない、バイトだったらある」という世の中ですが、どうやらこの時代(この方の記述では1952年当時)には、今とは全く逆だったようです。家庭教師は花形で「アルバイト貴族」と称されるほどだけど、ほかの仕事はサッパリ。引っ越しの手伝い、夜警、野球場の売り子など、いろいろと仕事は舞い込んでくるが、質も量も学生生活との両立が成立しない……と、ボヤキは続きます。

 結果、米国帰りの先輩の意見(この意見もかなり面白いのですが、ここでは割愛)を参考にして、彼は一般の労働者と競合しない分野に目を向けようと試み、「ふすまの張り替え」という仕事に着目します。理由は“家庭の中の労働は、当時換金化されていなかったし、企業との競合もないだろうから始めた”。スケールや実際の仕事はまるで違いますが、ニッチな部分に目をつけ、スタートアップしていくベンチャー企業と通底する部分があるなとか、タイムマシンがあれば当時の学生と会って、話をしてみたいと思わせる記述も、本書の中にはたくさん存在しています。

アルバイト経験は自己アピールの切り札だと就活生は考える

 さて、イマドキの学生のバイトの周辺のことに、話を進めていきましょう。バイトテロが世間では話題ですし、最近では「ブラックバイト」なる言葉も(これについては、いずれ稿を改めて言及する予定です)チラホラと耳にするようになってきました。就職もできない世の中なのに、学生アルバイトなんてあるわけがない、という昔とは打って変わって、今は就職できないからバイトをするというのが当たり前の時代。就活という観点から、とても面白いデータを見つけました。

企業が採用基準として重視する項目と、学生が面接などでアピールした項目(「就職白書2013」より)

 このデータは、株式会社リクルートキャリア・就職みらい研究所が発表している「就職白書2013」からの抜粋です。学生が面接などでアピールした項目としてトップになっているのは「アルバイト経験」です。「人柄」「所属クラブ・サークル」と続きますが、半数近くの学生が自分のアルバイト経験を、自らをアピールする要素として使っているのです。ところが、企業が採用基準として重視する項目に目を向けてみると、アルバイト経験はトップ3にも入っていません。「人柄」「自社への熱意」「今後の可能性」がダントツで、アルバイト経験は8位にランクインするのがやっと。「学部・学科」よりも順位が下です。

 ちなみに、手元にある自著(『就職のオキテ』)をひも解いてみると「就職白書2004」の中に掲載されていた同じデータを使って、この企業と学生のギャップについて言及しているページがあります。10年前のデータをみても、学生のアピール項目と、企業の重視した項目のトップ3は不変でした。パーセンテージも含めてほとんど変動がない。このことはいったいなにを意味しているのでしょうか。

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