吉岡: ベテラン編集者というと、当時書籍編集部の平均年齢はどれくらいだったんですか?
桂木: 52〜53歳くらいですかねえ。
吉岡: 大ベテランぞろいですね。今はだいぶ若返ったんですか?
桂木: このあいだ計算してみたら、40歳前後でした。今は雑誌編集部から来た、現役バリバリの編集者が集まっています。吉岡さんもご存知の中嶋愛(参考記事)も、今はうちで本を作ってるんですよ。『WORK SHIFT』という、ビジネス書大賞を取った本も作っている、エースです。
吉岡: 中嶋さんもそうでしたか! ビジネス書大賞はすごい快挙ですね。異動が決まったとき、桂木さんから見て、プレジデント社の書籍部はどのあたりが弱点だと思いましたか。
桂木: 良書はあるのですが、いかんせん地味なんですよね。爆発的に売れるものではないにせよ、もうちょっとフォローが必要なんじゃないか。これが1つ。
また、雑誌編集部が持っている人脈を生かせていない。いい著者がいるのに、頼んでいないんですよ。チャンスを逃していたと思います。これが2つ目。
それからこれは改めて気付いたことなんですが、同じ本でも雑誌と書籍というのはまるでビジネスモデルが違うんです。
吉岡: ビジネスモデルが違うというと?
桂木: 雑誌というのは一定期間おきに出すものですよね。雑誌で利益を出そうと思ったら、決められた期間内にできるだけ刷って、できるだけたくさん売る。基本的にはこの形に尽きます。
一方、書籍というのは非常にロングタームな商品で、細く長く売れるほうがもうかるんです。例えば、1200円の本を初版で5000〜6000部くらい刷ったとしましょう。5〜6割売れたとしても、これでようやくトントンなんです。利益が出るようになるのは2刷以降。在庫を嫌うこともあって、(ビジネス書は)そんなにたくさん刷りません。細く長く売り伸ばしていかないと、ビジネスにならないんです。
吉岡: なるほど……でも、細く長く売るというのは、編集者のがんばりで可能になるものなんでしょうか? 出版社って編集と販売が完全に分かれていて、編集者は正直、販売の現場には詳しくない人がほとんどじゃないですか。
桂木: そう、その通りです。なので、私が書籍部長になってやったのは「製造と販売の一体化」でした。セブンにしてもユニクロにしても、製販の垂直統合は市場攻略の必須条件ですからね。
吉岡: 製造と販売の一体化……それはつまり「編集と営業の一体化」ということですか?
桂木: はい。組織改編をしたんです。
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