誘っておいて面接で落とす――ここがヘンだよ日本の人事サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2014年01月20日 08時25分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

 そう書いても、まだピンと来ない読者の方もいると思うので、もう少し具体的に話を進めてみましょう。

 「どうしてウチで働きたいと思いましたか?」「ウチでどんなことがしたいと考えていますか?」

 就活でも転職でも、これらの質問は、面接の定番です。こういったことを聞かない面接官は少ないと思います。が、誘われて転職する、という状態の応募者にとっては、とても違和感がある質問なのです。

どうしてウチで働きたいと思いましたか?(写真はイメージです)

誘ったくせにやりたいことを聞くなんて、ふざけるな!

 考えてもみてください。誘われた応募者は、ある程度の能力が認められて、ウチで働いてほしいと言われている。それなのに、どうして働きたいのか? と聞かれても、困ってしまいます。してほしいことがあるから誘われたはずなのに、どんなことをしたいのか? と質問されたら、逆に「どんなことをしてほしいのか?」と聞きたくなるでしょう。

 実際、採用の現場ではこういうトラブルがまれに起きるようです。あるエンジニアが、そのスキルを認められて「ぜひウチに来てください。形式上の面接はありますが、話は通しておきますから」と言われて面接を受けたところ、採用担当者がいつもどおり「ウチでどんなことがしたいと考えていますか?」と聞いてしまい「ふざけるな、やってほしいことがあって、その能力を評価したから私を誘ったのだろう!」と怒って席を立ってしまったといいます。その後、そのエンジニアが別の企業で大活躍をしたという悲劇を小耳に挟んだときには、「起きるべくして起きたな」と私は思ったものです。

 採用担当者たちにこういう話をすると「応募者の了見が狭すぎる」とか「やりたいことを質問するのは当然だろう」という怒気を含んだ反論を受けることが少なくありません。しかしその反論を聞きながら、私はいつも不思議に思っています。

 働いた経験もなく、業務について理解が乏しい、新卒の学生に対する求人ならば「どんなことがしたいですか?」という質問は有効かもしれません。けれども、現役で働いている人、業務について一定の理解をしている人に対しての質問としては、どう考えても適切ではないからです。

 自社が用意している仕事を説明し、それに対して必要な能力が備わっているのか、という質疑が行われるならまだしも、ただ漠然と「やりたいことは何?」と聞くことが、いかに無意味か。考えれば分かることです。

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