何といっても日本社会の根本的な課題は晩婚少子化対策だ。
最も恐れるべきは、晩婚少子化、ひいては生産年齢人口の縮小がもたらす国内経済の縮小であり(これが見込まれるために企業は国内に投資しなくなっている)、地域社会の崩壊であり、社会保障制度の自壊である。これと並んで大きな課題とされる高齢化対策は、逃れられない結果に対する対処療法でしかありえないが、晩婚少子化対策は未来の話なので、政権の意思と政策次第で改善できる余地はあるのだ。
安倍政権は一方で、晩婚少子化対策のために「子育て支援メニュー」をいくつか打ち出してはいるが、迫力不足は否めない。人口1億人を保つと掲げながら、具体的かつ抜本的な政策を矢継ぎ早に打ち出すことをためらっているかのようだ。その一方で、晩婚少子化対策と思想的に相反する、副作用の恐れの強い「時間規制の適用除外」を執念深く推進しようとしている。
こうした矛盾により、政策が互いの効果を打ち消しあう事態が生じるのは、政権の中で優先順位がついていないからだと類推できる。司令塔が不在なのか、そうした役割にある人がこの矛盾に気付いていないか、または矛盾に気づいていながらも安倍首相が、残業代ゼロに個人的にこだわるゆえにどうしようもないとさじを投げているのか、いずれかだろう。
国の政策パッケージが多種多様な官僚発政策群のごった煮である場合、こうした政策間の矛盾が生じることは過去にもよく見受けられた話である。経済が成長している時代ならば大した問題は生じなかったのですが、今のように低成長、縮小の時代においては致命的な結果を招きかねない。
企業経営における改革においても同じことが言える。施策間に矛盾があると、効果を打ち消し合うだけでなく、それが意図しない暗黙のメッセージを伝え、思わぬ副作用のみ発現する事態を招くことがあるのだ。改革の思想とそれに基づく優先度付けが重要なゆえんである。(日沖博道)
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