アメリカン・エキスプレス・インターナショナルは12月5日、財務意思決定者1540人を対象に行った意識調査「アメリカン・エキスプレス・インターナショナル 世界7カ国中堅企業調査」(参照リンク)の結果を発表した。対象国は日本、米国、カナダ、メキシコ、ドイツ、英国、オーストラリアの世界7カ国で、日本では年間の売上規模が約5億〜1000億円の企業を対象としている。
日本の中堅企業について、調査で顕著だった特徴は3つある。1つめは支払いの方法で、現金支払いが主流であること。2つめは経費や業務渡航などを全社的に一元管理するシステムの導入率が低いこと。そして3つめは、今後6カ月にビジネスで取り組むべき最優先事項として「人材マネジメント(人材確保と育成)」を挙げる企業が多いことだ。
経費の決済手段を比較してみると、日本の中堅企業は全体の経費のうち53%を現金で支払っていると答えている。他国を見ると、米国は13%、ドイツは15%など、多くの国で現金支払いは10%台だ(メキシコのみ21%)。
逆に、日本の中堅企業が少ないのはクレジットカードでの支払い。カナダが32%と最も多く、多くの国で20〜30%台となっているのに対して、日本では10%となっている。
経費や業務渡航などを全社的に一元管理するシステムの導入率と満足度についても聞いている。
まず導入率では、他の6カ国の中堅企業が「経費の一元管理システム」を6〜7割程度導入しているのに対し、日本は46%と、唯一5割を切っている。また「業務渡航の一元管理システム」については他国の企業の約4割が導入しているのに対し、日本企業は19%となった。
「経費の一元管理システム」の満足度について聞くと、こちらも特徴的だ。他国では「まったく満足していない」「満足していない」が3%以下であるのに対し、日本の中堅企業では30%と回答している。そもそもの導入率が低い上に、非常に満足度が低い実態が明らかになった。
こうした結果について立教大学 大学院 ビジネスデザイン研究科教授の亀川雅人氏は、「サンプルを見ると、日本の中堅企業の株式公開は欧米諸国に比較して最も少なく、また株主構成が創業者や主要な株主で占められる典型的なファミリービジネスになっている。ファミリービジネスゆえに、会社の金融資産と株主の金融資産の境界が曖昧になり、過剰に現金・預金をを持つことになる。これを否定はできないが、この曖昧さは日本の中堅企業における、財務管理と資本の効率的運用の障害となっている」と述べている。
また従来、現金取引は安全で金利がかからない効率的な決算商法と考えられてきたが、近年では現金決済の取引コストに着目した経営が成功を収めていると言われる。例えば電子マネーはレジの取引時間を短縮し、現金管理の効率化を実現している。逆に、1円でも現金で過不足があれば、その原因を調べ解決する作業にかかる時間は、企業にとって目に見えない大きなロスとなる。
こうしたことについて亀川氏は「現金取引は、計算や記録などの出納業務の他にも、保管のための金庫やその管理、現金の輸送などに相当のリスクとコストがかかる。経営管理の専門家が不在なことは、中堅企業のコストを知らないうちに押し上げ、非効率な経営となっている」とコメントしている。「大企業と比べ、中堅企業は経営資源の調達に制約がある。経営管理の人材を雇用する余力も大きくない。そのために経営者のなすべきことは、外注化すべき機能の探索である。欧米の企業がなぜクレジットカードを利用するかを検討し、効率化できる機能として活用すべき。小さな組織が自社の中に金融機関を抱えるべきではない」と話す。
また、今後6カ月の最も重要な課題について聞いたところ、世界の中堅企業では「ビジネスの成長」を挙げる企業が多い。これに対し日本の中堅企業は「ビジネスの成長」と「人材確保・育成」が32%と同率1位となった。
また「人材確保のために最も大切なことは」という問いに対し、世界平均では「給料や待遇など」が最も多く平均28%だったが、日本で同回答は14%。日本の中堅企業では「企業理念や文化」が最も重要だと考える企業が多い結果となった。こちらは日本が35%に対し、世界平均は23%となっている。
本調査は6月に行われたオンライン調査。年間売上高が5.1億〜1020億円の企業200社の財務意思決定者を対象に、世界7カ国、1540人に調査を行った。
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