国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
格闘技ファンにとっては、楽しみな大みそかがやってくる。総合格闘技(MMA)とプロレス団体の「イノキ・ゲノム・フェデレーション(IGF)」が12月31日、両国国技館で「INOKI BOM-BA-YE 2014」を開催する。
3年連続で年の締めくくりに行われる同大会は、今年も人気ファイターたちが参戦する好カードが目白押し。メインイベントではIGF王者のミルコ・クロコップ VS 挑戦者・石井慧のIGFチャンピオンシップ防衛戦、ほかのカードでも青木真也 VS 山本勇気などMMAのIGFルールマッチが5試合組まれており、プロレスもGENOMEルールマッチとして小川直也、ジョシュ・バーネット VS 藤田和之、ミノワマンのタッグマッチなど5試合が現時点でラインアップされている。
白熱の戦いが期待できそうなのはもちろんだが、同イベントで毎回面白いなと感じさせられるのは、MMAとプロレスの融合だ。かつて一世を風靡した人気格闘技イベントのPRIDEやHERO'S、DREAM、K-1などで活躍したMMAファイターのガチンコ勝負に加え、同じ大会でストロングスタイルを表徴するプロレスの試合がマッチメイクされているのは興味深い。
ひと昔前ならば、まず間違いなくMMAはプロレスのアンチテーゼであった。それは過去における日本のMMAの歴史を振り返ってみれば、一目瞭然である。
予定調和の戦いから派生するプロレスのマンネリズムに限界を感じた多くのプロレスファンがMMAに興味の場を移したことで、日本の総合格闘技ブームは間違いなく一時代を築き上げた。だから、かつては多くのMMAファイターが「俺たちはプロレスラーとは違う」と線を引き、肉体の限界に近い真剣勝負を見せることで、コアなファンだけでなく世間の評価も得て、社会現象を巻き起こしたのだ。
しかしながら、長きにわたって人気を博し続ければ、プロレス同様にどうしてもマンネリズムの呪縛から逃れることはできない。「ブック」(段取り)ではない真剣勝負であるからこそ、両立の難しいショーマンシップを否定し続ければ、コアなファンには受け入れられても一般層からの注目度はグンと低くなってしまう。
マンネリズムを打破するため、いかにして真剣勝負とショーマンシップのバランスを保っていくかに日本のMMA業界の関係者たちは頭を悩ませることになってしまったのである。
そうこうしているうちに、2006年6月、ここでタイミング悪く民放局のフジテレビがPRIDEの地上波放送から撤退――。これを機に日本発の世界最高峰の格闘技イベントは衰退の一途をたどって消滅してしまった。後発イベントのDREAMや「戦極」もPRIDEのような爆発的な人気を得ることはできず、瞬く間にフェードアウトしてしまったのである。
PRIDE消滅から約8年半が経過した現在、当時と比較して日本の総合格闘技界が大きく様変わりしたのは間違いない。今となっては日本で空前の総合格闘技ブームと言われたPRIDE隆盛の時代が、まるで蜃気楼のようになってしまっているのが現実だ。
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