緊急通報位置情報通知がスタート。重要になる携帯電話向けGPS:神尾寿の時事日想:
3G携帯電話から110/118/119番通報した際に、通報者の位置や、駆けつけるべき場所をGPS機能を使って通知機関に知らせる仕組みが4月1日からスタートした。携帯電話と位置情報の組み合わせは、今後注目すべきビジネストレンドになりそうだ。
4月1日、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの携帯電話キャリア3社が「緊急通報位置通知」機能を開始した(1月10日の記事参照)。これは携帯電話から緊急通報(110番/118番/119番)が発信された場合、通報者の位置を自動的に受理機関(警察機関/海上保安庁/消防機関)へ通知するシステムであり、今後、第3世代携帯電話(3G)は対応が義務づけられることになる。
携帯電話の位置特定の方法は、現在、「基地局情報による測位」と「GPS(全地球測位システム)による測位」の2種類がある。
前者は携帯電話基地局からの電波を使っておおよその位置を割り出す方法で、測位誤差は数百メートルから1キロメートル程度。一方、後者はGPS衛星の電波を携帯電話でキャッチし、そこから位置を割り出すため、測位誤差数十メートルの正確な位置が分かる。
総務省では緊急通報位置情報通知機能の導入に当たり、当初は基地局情報のみの対応を認めるが、今後は原則的にGPS搭載を義務づける方針を打ち出している。GPS携帯電話はこれまでKDDIのauが積極的に搭載してきたが、ドコモやソフトバンクモバイルの携帯電話でも、GPSが標準的な機能になっていくことになる。
正確な緊急通報のために位置情報通知機能を搭載するという動きは海外でも広がっており、北米では「E911」、欧州では「E-112」という位置情報通知型緊急通報サービスがある。このように、携帯電話への位置情報搭載は世界的なトレンドになってきている。
携帯電話+位置情報を新たなビジネスに
携帯電話へのGPSなど位置測位機能の搭載は、緊急通報サービスだけでなく、位置情報を使ったビジネスやサービスを生み出す土壌にもなる。
例えば、GPS携帯電話にいち早く取り組んだKDDIでは、ナビゲーションサービスの「EZナビウォーク」や「EZ助手席ナビ」を中心に、GPS機能を活用したサービスを多数展開。この分野で出遅れたドコモも、昨年のFOMA 903iシリーズ以降、GPSを標準機能として扱ったことで、歩行者ナビゲーションを始めとするコンテンツ・サービスが増加している(2006年10月の記事参照)。
また、現在の位置情報コンテンツ・サービスは有料課金モデルで運営されているが、ユーザーの居場所に応じた「位置情報広告」のビジネスも検討されており、将来的にはビジネスモデルの多様化も起きそうだ。
一方海外では、スマートフォンと呼ばれる高機能な携帯電話にGPSを内蔵し、地図やナビゲーションサービスで活用することに注目が集まっている。例えば、世界最大の携帯電話メーカーであるノキアは、昨年12月に開催されたNokia World 2006において、「次のキラーアプリはGPS」(Nokia マルチメディア事業部マルチメディア・エクスペリエンス上席副社長のイルッカ・ライスキネン氏)と語っている(2006年12月の記事参照)。
日本ではauが先行したが、全体的に見ればGPS携帯電話のビジネスは“これから始まる”段階だ。海外市場まで踏まえればなおさらだ。携帯電話のGPS機能は、様々な業種・分野で、これからのビジネスにとって重要な要素になるだろう。
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