SuicaとPASMO、2枚同時に使う法
財布やパスケースに、PASMOとSuicaを一緒に入れると誤動作してしまう。複数のパスケースを持つか、一方を解約するか、それとも──。1枚のパスケースで2枚のICカードを使い分けられる製品を試した。
「定期をPASMOに替えたので、Suicaを解約しました。だって、改札でエラーが出るんだもの」
3月18日以降、PASMOを手に入れたかなりのユーザーがSuicaと共存ができないのを知って戸惑っている。Suicaを解約するといっても、実はチャージした金額を払い戻すには210円の手数料が必要。また通勤経路によっては、SuicaとPASMO、2枚の定期を持たないといけない場合もある(4月10日の記事参照)。2枚を共存するにはどうしたらいいのだろうか。
そんな課題を、パスケースの工夫で解決したのが群馬県に本社を持つシェリーだ。電波を通さない素材を挟み込んだパスケース「アイクレバー」を開発。片面にSuica、もう片面にPASMOを入れることで、タッチした面の非接触ICを利用できるようにした。
「商品化のアイデアは、関西でPiTaPaとICOCAを同時に利用したことによるエラーの話から始まった。3月18日のPASMO発売から、首都圏でも関心が高まってきている」とシェリーの清塚姿副社長は話す。
既に2万個を販売。OEM提供も
アイクレバーは、2006年の12月20日に発売し、3月18日以降販売に火がついた。わずか4カ月で既に2万個以上を販売したという。Suicaの累計発行枚数が2000万枚であることを考えても(4月10日の記事参照)、なかなかの滑り出しだ。
仕組みはシンプルだが調整が難しいと、製造元である大洋の清塚徹専務。2枚のカードを仕切る素材は、電波を吸収するフェライト材と、電波を遮る素材の2種類でできている。フェライト材が吸収した電波を側面に逃し、遮る素材が反対面への電波の進入を防ぐ。「他社でも同様の製品は作れるだろうが、チューニングがポイント。例えば、電波は横から回り込むので、2枚のカードの間が4ミリ空いてしまうと反対側のカードに電波が伝わってしまう」。同社では、駅改札の読み取り機よりも出力の大きなテスト機で試験を繰り返し、課題をクリアしていったのだという。
恐る恐るパスケースにPASMOを挿して、実際の改札で試してみる。ピタッと付けて5秒程度待っても、裏面に挿したPASMOには全く反応しない。うたわれている機能通りなのだが、妙に感心してしまった。
この技術を評価して、大手の交通事業者や有名ブランドなどにもOEM供給が始まっている。複数カードの使用によるエラーは、交通事業者自身の課題でもあり、他社技術を使うことで解決策が生まれつつあるのが現状だ。
増えるFeliCa。入れ方に注意
非接触ICチップ「FeliCa」を使ったカードは、数カ月前まではSuicaとEdy程度だったが、このところ急増が続いている(ちなみにSuicaとEdyは財布の中では共存できていた)。PASMOだけでなく、流通系の「nanaco」や「WAON」など、財布の中には複数のFeliCaカードが混在してくるのは間近だ。
「こうした電子マネーなども、複数枚財布に入っていると誤動作するということはあまり知られていない」と清塚姿氏。財布に入れるのを1枚に絞るという方法のほかに、アイクレバーのような製品を活用するという解決策も覚えておきたい。
アイクレバーは、柔らかなシカ革を使った製品が4800円(9色)、牛革製が2980円で発売中。大手文具店のほか、同社のネットショップでも販売している。
なお、PASMOとSuicaの使い分けだけであれば、携帯電話をうまく使う方法もある。SuicaをモバイルSuicaとして携帯に入れ、財布はPASMOとして使い分けるのだ。荷物を増やさず使い分けられるので、おサイフケータイの利用者は試してみてはいかがだろう。
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