写真で見る、最新関西PiTaPa事情 :ポス・ポーターから駐輪場決済まで:
共通ICカードでPASMO/Suicaよりも先行している関西エリア。関西圏の私鉄・バス各社の路線で共通利用できる「PiTaPa」は、乗車券以外にもさまざまな利用が進んでいる。宅配ロッカー、駐輪場など、PiTaPaを利用した各種サービスを紹介しよう。
関西の私鉄・バス事業者を中心に採用されている「PiTaPa」(4月20日の記事参照)。同サービスはFeliCaを使ったIC乗車券システムでは珍しく“ポストペイ(後払い)方式”を採用しているほか、電子キーなど様々な応用サービスも展開している。
本記事では、関西におけるPiTaPa最新事情を写真とともにお届けする。
宅配ロッカーからそのまま発送。ポス・ポーター
電車やバスでショッピングに行くと、憂鬱なのが、帰宅時の荷物が増えることだ。帰りに荷物を持ち帰るのが面倒で、“クルマでショッピング”を選ぶ人は多いだろう。
電車やバスで出かけるのはいいが、増えた荷物を持ち帰るのは大変。そのようなニーズを狙ったPiTaPa活用サービスが「ポス・ポーター全国発送便」である。
このサービスは、駅や商業施設にある専用ロッカーに荷物を入れておくと、それを自宅など指定した住所に郵便公社の「ゆうパック」で届けてくれるというもの。駅ロッカーとゆうパックの組み合わせとしては、ロッカーでゆうパックを“受け取れる”「ポストキューブ」があるが、ポス・ポーターはその逆でロッカーからゆうパックを“送れる”ものだ。運営はポストキューブと同じエックスキューブが行っている。
「ポス・ポーターの前身は、今年1月にNEDO(独立行政法人 新エネルギー産業技術総合開発機構)の助成で行った社会実験“レール&ショッピング手荷物お届けサービス”です。実験では空港や駅など6カ所にロッカーを設置したのですが、そこでの利用実態を踏まえて、今年3月から商用サービスに移行しました。将来的には設置駅を増やすほか、PiTaPaが使える商業施設にも置いていただければと考えています」(スルッとKANSAI、PiTaPaビジネスサークルコアリーダー執行役員の松田圭史氏)
ロッカーから無人で荷物を発送するというと、不法品の発送などに使われないかという懸念もあるが、そこは複数の個人認証システムで不正利用を防いでいる。
まず、ポス・ポーターで発送手続きをするには、指定された電話番号に自分の携帯電話から電話をかけて、発信者番号を登録しなければならない。支払いはPiTaPaのみなので、PiTaPaカードのIDも記録される。さらに操作パネルの上部には小型カメラも取り付けられており、利用者の顔が記録される仕組みだ。
「セキュリティや不正利用の防止という点では、PiTaPaカードを使うメリットが大きい。PiTaPaはポストペイですから、発行時に本人性確認と与信をしっかりと行っています。現金のように匿名性がありません」(松田氏)
他のFeliCa決済を見ても、SuicaやPASMO、Edyはプリペイド(前払い)であり、本人確認なしで使える無記名式カードがある。カード自体にはIDがあるが、それが個人情報と紐づけられておらず、現金同様に匿名性があるのだ。ポス・ポーターはポストペイでカード発行時に本人確認をしているPiTaPaやiD、QUICPayなどといったFeliCaクレジット向けのサービスと言えるだろう。
有料駐輪場でもPiTaPaが使える
都市部の駅において、自転車の駐輪対策は重要な課題だ。通勤・通学の利用者は定期契約の駐輪場利用を促すとしても、不定期で駅と電車を使う自転車利用者の駅前駐輪も多い。
PiTaPaを採用する阪急電鉄などは一部の駅で、駅前に有料駐車場を設置。その支払い方法として現金のほかにPiTaPaが利用できるようにしている。
「駐輪場の利用料は6時間以上で100円と安いですから、現金決済だとどうしても小銭を取り扱うことになります。PiTaPaはそういった少額でもキャッシュレスで支払えますから、利用者の利便性向上につながります」(阪急電鉄都市交通事業部本部都市交通計画部調査役の片岡孝視氏)
なお、各鉄道会社では駅前駐輪の問題を「鉄道会社として取り組まなければならない課題の1つ」(片岡氏)と見ており、それ自体で利益を出すことは考えていない。PiTaPa対応の狙いは、利便性を向上することにより少しでも駐輪スペースの利用を促進することだ。
コンビニ、スーパーでも利用拡大
PiTaPa決済は駅ナカのコンビニや周辺スーパーでの導入も増えている。これらの店舗では、売り上げ拡大効果がすでに現れており、加盟店にとってのメリットになっている。
例えば、高級スーパーマーケット「成城石井」の梅田店では2004年10月からPiTaPa決済に対応しているが、1日あたりの利用件数は平均300件前後、多い時には350件に上り、これは決済件数全体の10%弱になっているという。
「PiTaPaの利用件数は年々伸びていますね。うちではクレジットカードもサインレスで使えるのですが、すでにPiTaPaの方が(利用率で)クレジットカードを上回っていますね。また店舗側から見ると、客単価上昇の効果が大きい。平均すると客単価は(現金決済よりも)2割強は上昇しています。
ほかにも駅の近くのスーパーですから、買い物を急ぐお客様も多く、(PiTaPaが)支払いのスピードが速いことや釣り銭のやりとりで間違いがないこともメリットになっています」(成城石井梅田店店長の掛江淳史氏)
客単価の上昇はコンビニでも同様だ。駅ナカのコンビニエンスストア「アンスリー」ではPiTaPaとiD、Edyを導入しているが、FeliCa決済利用者の客単価は2割程度高いという。
自販機や専用自動改札機も増加。PiTaPa普及は着実に進む
筆者は定期的に全国各地を取材しており、関西にも定期的に足を運んでいるが、その中で感じるのは駅や店舗でのPiTaPa対応が着実に進んでいる点だ。すでにPiTaPa決済の加盟店は1万5千店を超えており、最近ではPiTaPa対応の自動販売機もよく見かけるようになった。関西ではJR西日本のICOCAも電子マネーを展開しているが、そちらの加盟店は現在187店舗。関西の交通系FeliCa決済では、PiTaPaが大きくリードしている。
PiTaPa対応駅の一部に広がり始めた「IC専用」のPiTaPa自動改札機。構造はJR東日本のSuica専用改札機と同じで、磁気式のカードや切符を利用できなくすることで、メンテナンスコストの削減と通過速度の向上に貢献する
また鉄道分野に目を向けると、PiTaPa専用の自動改札の整備も進んでいる。最近では「サッとPiTaPaをかざして改札機を通過する姿が評価されたのか、20代女性のPiTaPa契約者が増えている」(松田氏)という。
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