「携帯でもマッシュアップを」――Googleの「Android」
Googleの携帯電話向けプラットフォーム「Android」は、PCネットのようにオープンな世界を携帯電話上にももたらしたいといい、「マッシュアップが携帯でもできるようになる」と担当ディレクターは話す。
米Googleがパートナー33社と共同で11月5日に発表した「Android」(アンドロイド)は、「世界初の、完全に統合されたオープンな携帯電話向けプラットフォーム」だ。「PCで行われているようなマッシュアップが、携帯でもできるようになる」――テレビ電話を通じて日本のメディアと会見した同社モバイルプラットフォーム担当のアンディ・ルビンディレクターはこう話し、「オープンであることが新しい」と強調する。
Androidは、LinuxベースのOS、ミドルウェア、ユーザーインタフェース、メーラーやWebブラウザ、カレンダーといった基本アプリケーションを含んだ携帯電話向けプラットフォームの総称だ。
Apache Licenceを利用したオープンソースで提供され、参加各社は必要な一部機能だけを選んで使うことができる。スマートフォンのような高機能端末だけでなく、ローエンド端末にも対応できるとしている。
Googleが中心となり、携帯電話メーカーや通信事業者など33社と組んだアライアンス「Open Handset Alliance」(OHA)で開発。OHAの33社には、T-MobileやQUALCOMM、Motorolaなど米国を中心とした携帯キャリアやチップメーカーのほか、国内キャリアとしてはNTTドコモとKDDIが参加する。
AndroidのSDK(ソフトウェア開発キット)は1週間以内に、Windows、Macintosh、Linux用のエミュレータ付きで公開する。α版も「近く案内できるだろう」としている。Androidを採用した携帯端末の登場は、2008年になる見込みだ。
2〜3年は携帯端末向けの開発に注力するが、将来はメディアプレーヤーやカーナビ、セットトップボックス(STB)など家電向けの開発も視野に入れる。
PCネットと携帯ネットの架け橋に
「PCのネットと携帯ネット間のギャップを埋める架け橋になりたい」とルビンディレクターは言う。オープンプラットフォームのPCネットは急速に進化しているが、携帯ネットはキャリア・端末ごとに仕様が異なるためサービス開発が面倒で進化のスピードもゆるやか――という問題意識があるという。
日本の携帯電話用ネットサービスの仕様も、キャリアごとに異なり、OSやユーザーインタフェースも端末ごとにまちまち。これが携帯電話メーカーやアプリケーション開発者の開発の自由度を下げ、開発コストを高めてきた。
KDDIとソフトバンクモバイルは、それぞれ「KCP+」「POP-i」という統合プラットフォームを発表しているが、それもキャリアに閉じた垂直統合で、キャリアをまたいだサービス開発などにはつながらない。
「携帯のプラットフォームは現状、キャリアが独占しているが、ベンダーにとって、1社だけにサービス提供することに価値はあるのだろうか。全ての事業者に対して、同じ形で提供できるプラットフォームなら、ベンダーの選択肢も増えるし、開発コスト削減につながる」。Androidは無償で提供するため、端末の開発コストを10%程度下げられるとしている。
マッシュアップを携帯にも
PCネットに“マッシュアップ文化”をもたらしたGoogle。それを携帯電話のネット上にも作り上げたいという。「Androidを使えば例えば、Google Mapsと他サイトを組み合わせたサービスなども簡単に作れる。各機能はモジュール式になっているので、ベンダーは必要な機能だけを選んで自社サービスと組み合わせることができる」
Google収益は
Googleのビジネスにとってのメリットは、「ネットユーザーが増えること」だ。「Androidを採用した端末はネットへのアクセスがより便利になり、Googleの『検索』『広告』という2大ビジネスにもアクセスしやすくなる」
「今、ユーザーは職場や家のPCでネットにアクセスしているが、Androidを活用してもらってスポーツ観戦中や地下鉄の車内などでもアクセスできるようにしたい」
MSは「ライバルだが……」
マイクロソフトも「Windows Mobile」というプラットフォーム推進に向けて取り組んでいる。「マイクロソフトはライバルだと考えてもらっても構わないが、Googleは1社独占ではなく、コミュニティーと一緒に行動したいと思っている。1社に依存しない、民主的な仕組みだ」
日本市場は「新技術への期待が高い」
ドコモやKDDIといった日本の参加キャリアや日本市場ついては「日本の市場は新技術への期待が高く、新しいことに次々にチャレンジする点に期待している」とコメントした。
関連記事
- Google、携帯向けオープンプラットフォーム「Android」発表――33社が参加
Googleが発表したのは、「うわさされたGoogle携帯よりも野心的」な包括的プラットフォームの開発。T-Mobile、HTC、NTTドコモ、KDDIなどがアライアンスに参加する。 - Googleのモバイル計画、間もなく発表
米国時間の11月5日、Googleが以前からうわさされていた「Googleフォン」の計画を発表する。Linuxベースの携帯電話OSが登場する見込みだ。(ロイター) - 「Googleケータイ」、Sprintも乗り出す?
全米第2位の携帯キャリアVerizonに続いて、第3位のSprintもGoogleケータイをめぐる話し合いを進めている。(ロイター) - Googleのモバイル計画、カギは携帯SNSか
インターネット企業はオンライン広告の肥沃な大地を探してモバイルとSNSに注目している。Googleは既に、モバイルSNS企業を3社買収している。 - France Telecom、Googleと携帯について協議中との報道を否定
Verizonとの交渉もうわさされているGoogle。傘下に大手キャリアOrangeを持つFrance Telecomが、メディアの報道を正式に否定した。(ロイター) - [WSJ] Googleケータイはキャリアを揺るがすか
Googleは2週間以内に、“Googleケータイ”の計画を発表するもようだ。同社は携帯電話向けのソフトやサービスに対する携帯キャリアの支配力を弱めようとしている。 - ソフトバンク、携帯電話用共通アプリケーションプラットフォームを開発へ
ソフトバンクモバイルは、携帯電話用アプリケーションの共通プラットフォーム「POP-i」の開発に着手し、来年発売する新機種から実装する。OSやチップセットの違いを吸収し、開発の効率化とソフト資産の流用が可能になるとしている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.