研修は「気づき多い」も「行動変わらず」――人事部門の“ホンネ”
気づきを得るのに効果的な研修だが、人事部門の過半数は「研修後も行動は変わらない」と考えている――。こんなことが、国内138社が対象の「企業における人材育成の実態調査」で分かった。
企業内の研修は気づきを得るのに効果はあるが、人事部門の過半数は「研修後も行動は変わらない」と考えている――。国内138社の人事・人材育成部門の管理職以上にNTTレゾナントが実施した「企業における人材育成の実態調査」で、こんなことが分かった。
NTTレゾナントが定義した研修とは、新人研修、若手研修、主任・係長研修、新任管理職研修、管理職研修、全員研修といった階層別研修のほか、集合研修、合宿型研修、eラーニング、OJTといった形式の研修。会社が費用を支払うようなビジネススクールのセミナーやビジネス書なども自己啓発タイプの研修だという。
新人研修はたいてい集合研修
こうした研修は、今も昔も社員教育において一定の割合を占める。特に多いのが新人研修に代表されるような、全社で取り組む一元的な研修だ。「階層別研修などのカリキュラム・研修を整備」している企業は72.1%、「全社員共通のスキル研修を実施」は71.6%を占めた。
一方、業務に密接した人材育成は各部署に任せている。各部署で独自に実施しているケースが多いのは「所属別の業務、知識研修」(61.1%)と「OJTを制度として実施」(51.5%)の2つだった。また、社員の個別の問題に合わせるような研修にも取り組んでいるようだ。「育成課題毎に研修体系を構築」は44.2%、「社員個々のキャリアプランの立案・評価を実施」は52.6%だった。
実施率の高い研修は「新人研修」(45.3%)。形式別では「集合研修」(59.6%)も多かった。特に新人研修のうちの88.4%は集合研修。NTTレゾナントでは「定型的であり、実施しやすいのではないか」という。反対に実施率が低い研修は「全員研修」(23.6%)や「主任・係長研修」(24.5%)、形式別では「eラーニング」(20.5%)や自己啓発関連が20%台だった。
昇進試験よりも気づきはあるが、行動を変えるには至らない
成果ばかりではない。集合研修や合宿型研修では「研修終了後のフォローが不十分」「日程調整等の運営負荷が大きい」という答えもあった。eラーニングでは「カスタマイズが困難」、OJTでは「研修終了後のフォローが不十分」「研修効果の把握等が困難」だという。ビジネススクールなどに通ったり、教材を購入したりする自己啓発系の研修では、「参加率が低い」「コストが高い」「研修効果の把握が困難」が挙がった。
自分自身の弱みや問題点に気づくきっかけとして、78.8%の会社が研修を選択。これは昇進試験(70.6%)を超える数字だ。実際、「気づきを得ることが多い」(88.0%)という。だが、それが行動に結びつかないのが問題。むしろ、行動が変わるのは昇進試験(41.7%)だったり、コーチングなどによる「キャリアカウンセリング」(40.6%)だったりするようだ。
「研修は効果が見えづらい」(NTTレゾナント)。目の前に昇進がぶら下がっているような試験に比べたら、研修だけでは、現金なビジネスパーソンの行動を変えるのは難しい――のかもしれない。
企業における人材育成の実態調査は、郵送アンケートによる直接返信方式で、調査期間は8月6日から9月10日まで。業種は製造業が28%、サービス業が23%、商業が17%、運輸・情報通信業が15%、金融・保険業、建設業、不動産業がそれぞれ7%、電気・ガス業1%。社員数は500人以下が32%、500人超〜1000人以下が24%、1000人超〜3000人以下が21%、3000人超〜5000人以下が9%、5000人超が14%だった。
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