どうなる、こうなる首都圏の道路網――(3)東京外かく環状道路編:近距離交通特集(3/3 ページ)
今後の首都圏での高速道路建設計画を紹介する連載の3回目(全4回)。今回は「3環状」のうち、2番目に外側にある東京外かく環状道路の建設計画を取り上げる。
20年以上にもわたる“凍結”
なぜ、こんなにも時間が掛かったのか?
主な理由は、関越自動車道から東名高速道路にかけての区間、約16キロメートルの予定地に住宅地域があったことにある。練馬区や世田谷区といった住宅密集地帯を通過する計画となっており、計画が周辺住民に知らされたのは決定後のことだった。
1960年代後半は大気汚染が騒がれ始めた時期でもあり、計画当初から住民による激しい反対運動が起きた。予定地やその周辺の、練馬区・杉並区・世田谷区・武蔵野市・三鷹市・調布市・狛江市などでは市区議会で反対決議がなされた。これらの動きを受けて1970年、当時の根本龍太郎建設大臣が計画の「凍結」を宣言する事態となった。
この「凍結」宣言の影響は大きく、さほど障害のなかった三郷JCT−和光IC−大泉JCTについても、開通は20世紀も終わりに差し迫った1998年まで待つ必要があったのだ。
全線開通はまったくの未定
環の完成を目指して、計画が再び動き出したのは2001年のこと。この年の4月に国土交通省と東京都が「東京外かく環状道路の計画のたたき台(PDF)」を公表した。
内容は外環道計画を再び進めるために「予定していたルートの確認」「構造を高架から地下に」「ジャンクションとインターチェンジの位置の見直し」「予定ルートの地上部の利用」「環境への十分な配慮」の5点を示した上で、周辺住民の意見を反映しながら進めていくことを明確にするものとなっている。
これを受けて、西部分についてはくPI(パブリック・インボルブメント)方式を採ることとなった。PIでは計画を進めるに当たって、地域住民への説明や意見交換など、多くの手続きを必要とする。
2008年中にも、各地域で住民を対象とした説明会、検討会が開かれており、それらの情報は国土交通省のWebサイトで常時公開されている。
東京における都市計画の難しさ
「3環状9放射」プロジェクトの中核をになう外環道だが、現状では全線開通の具体的なスケジュールが見えていない状態だ。東京23区の外縁部をなぞるルートは高い利便性が期待できるものの、その利便性は周辺地域への影響と表裏一体となっているためだ。
こうした外環道の現状には、東京における都市計画の難しさが集約されていると言えよう。
→どうなる、こうなる首都圏の道路網――(1)都心を囲む3つの環
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