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コラム

歴史的建造物を救え!――古都ウルムの大聖堂修復プロジェクト松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

欧州に多い石造りの建物でも年数を重ねれば建材が痛み、修復を怠ると石材の落下や建物崩壊の危険が生じる。そのため、1年中修復作業をする必要があるのだ。

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作業の様子

 地上数十メートルの南塔作業現場までは作業用エレベーターでおよそ5分かかる。修復されていない石材は緑色・黒色・灰色をしているが、修復を終えた石材は本来の真新しい地肌を見せるので違いは簡単に分かる。

石工マイスターのビューム氏(南塔の作業場、左)、無数の彫刻が尖塔を飾っている(右)

 修復・複製の主な手法は以下の通り。

1.研磨用の特殊な砂を高圧空気で吹きつけて石材の表面を薄く削り取る。

2.損傷箇所を抜き取り、地上の作業所で修復した後、再び据え付ける。

3.損傷箇所を抜き取り、新たな石材を使って複製し、据え付ける。

 作業員は石工マイスターのアンドレアス・ビューム氏を筆頭に職人・見習いを含め14人ほどおり、2〜3人のチームで作業に当たっている。見学した日はたまたま穏やかな晴天であったが、風をさえぎるものが一切無い高所作業は過酷だ。ちなみに日本ならば高所作業では必ずヘルメットを着用するが、ここでは義務にはなっていない。

南塔の作業現場(左)、主塔から見下ろした南塔(右)

 複製作業は基本的に地上の作業所で行われ、職人の腕を頼りにできるだけオリジナルに近いものが作られる。石工とは別に教会内の木彫品、例えば木製ベンチの修復作業を担当する職人もいるが必ずしもすべての職人が初めから教会建築を専門としていたわけではなく、異業種間の転職も多い。


地上での複製作業

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