ちょい上の「ホテル東急ビズフォート」――成算はどこに? :郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
不況の影響を受け、ちまたには低価格商品があふれんばかり。100円台のハンバーガーや1000円を切るジーンズなどが注目を浴びているが、“ちょっと上の消費の兆し”が出ているのも確か。今回は宿泊料金がやや高めのビジネスホテル――「ホテル東急ビズフォート」を紹介しよう。
ホテル開発の環境変化
一般的にホテルの開発は数年越しで行われる。同社でも2005年ころ、地価高騰・資材高騰でホテル出店が採算がとれない時期から新ブランドの検討を始めた。当時ホテル業はイケイケムードだった。REIT(不動産投資信託)の投資利回りが上がり、土地や建物のオーナーも投資家も潤った。ビズフォ―トでも“ちょっと上”を狙ったのはそんな背景もあったと思う。
ところが一転して大不況。多くの不動産投資家がどこかに消え、施設稼働率が落ち、淘汰されるホテルも出てくるだろう。ただ高いだけのホテルの料金は自壊している。だが土地や建物の賃料が下がり、借り手優位となった今、実はホテル運営者にはチャンス到来なのだ。もちろんターゲットニーズに合った施設作りができればという条件付きで、今の市場環境はあながちマイナスではない。
ちょっと高いけれど
同社の各ホテルのポジショニングを、記者発表が行われた渋谷エクセルホテル東急に飾られていたお雛さまで表した。
コンフォートでは主力のBizスタンダードの宿泊料金を、東急インより3000円ほど高くエクセルホテル東急より3000円ほど安くしている。不況であってもバジェットホテル(省力化・合理化を進めた低価格のホテル)勝負の消耗戦にはいかない。逆に価格をちょっと上げて、“アッパービジネスパーソン”に照準を合わせて勝負をするのが東急流。
ちまたには安いものが溢れている。990円ジーンズや200万円を切るハイブリッド車。PB商品開発はマッサカリだし、デパ地下客はスーパーの総菜に流れ、昔の新幹線客は今や夜行バスに揺られ、コシヒカリは売れなくなった。消費の背伸びメッキが剥がれてきた。
不況だからバジェットホテルが流行る、それも一時的にはあるだろう。だがバジェットホテルに泊まる客層の出張自体が減少しているのも事実。このあたりをどう読むか。私は不況の向こうにちょっと上の消費の兆しがあらゆる分野で見えてきたと思う。大切なのは、自社のターゲットの本質やホンネを見極める時期になった、ということである。ターゲットが明快なホテルビズフォート、あんがい苦戦しないと私は見るけれど。
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