「読者はトップページをスルーする」――入り口が多様化するWebマーケティング:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
Webサイトを立ち上げたものの集客に悩む筆者。そこで、370社にWebアクセス解析システムを導入したオーリック・システムズを訪問、モバイル事業戦略室の伊藤要介さんに話を聞いてきた。
トップページは入り口にならない
日経の広告から、電話予約やQRコードでイープラスの予約画面(トップページではない)にアクセスしてチケットを購入。1970年代から活躍するサザン、桑田さんと同年代の“日経ミドル”がコアなファン層ではあるが、ちょっと驚きだ。音楽雑誌を読む人は減り、メディアも多様化した今、チケットサイトや音楽サイトは必ずしもチケット購入の入口とはならない。
Webサイトで広告を出す場合も、トップページに出すことが必ずしも最善の選択とはならない。「トップページに広告出稿すればOKではないんです。むしろ大都市圏のコンサートはちまたに情報があふれているので、後ろ(トップページ以外)で構わない。そうすれば広告費を削減できます」、「RTmetrics」というWebアクセス解析システムを啓蒙する伊藤さんは言う。
例えば広島に住む人なら、デートで行きたいコンサートを探す時に「福岡」や「京都」といったエリアで検索するかもしれない。特定のミュージシャンのコアなファンは別として、週末にエンタメを楽しみたい人はそんな探し方をする。メディアの記事、メルマガ、クチコミやSNSコミュニティ、Web以外と、お客さんはさまざまな“入口”からやってくる。トップページをスルーして、目的のページだけ訪れる人が圧倒的に増えた。
“店頭”からやってこない消費者をどう分析するか?
RTmetricsで何ができるのか? まず「いろいろな入口からやってくるお客さまをつかめる」と伊藤さんは話す。「Webサイト流入→Webサイト内行動→コンバージョン→再訪」の動きを、「導線」と「動線」に分けて分析する。
導線分析は「どこからやってきたか(きっかけは何か)」「誰がゴールしたか(コンバージョン)」。「どこからやってきた人が、売り上げを生み出す行動をしてくれたか」を知る分析である。
さらに、個の動きをリアルタイムで把握できる動線分析で、「購入者と非購入者での個の行動の違い」をつかめれば、サイトの出来映えやユーザビリティ(分かりやすさ)を改善できる。改善する上で数値があると、説得しやすいのもポイントだ。
RTmetricsを導入しているゴルフダイジェスト・オンラインでは、ゴルフポータルとしての規模と商品の販売数との間にギャップがあることに悩んでいた。その理由の1つとして、ニュースでは片山晋呉選手のことをとりあげているが、同じ期間に販売サイトでは単に粗利の高い商品をイチオシするなど、チーム連携や成果意識がチグハグだったことがあった。そこでWeb分析指標と業績評価指標とを連動させて、スタッフに目的志向のアクションを考えさせるための改善を行った。
しかし、アクセス解析で分かるのは、あくまで数値だけである。「どう改善したいのか・すべきか」については、「経営ビジョンやコンセプトと、Webサイトとのギャップを考えてください」と伊藤さんは語る。それを考えてこそ、買わないワケが見えてくる。アクセス解析は「原点再考」のきっかけだ。
Web解析からのヒューマンタッチのアクセスアップ
さてWebサイトを運営する私、SEO対策で記事にキーワードを入れ、ブログやメルマガも書いて宣伝する。伊藤さんに「もっとアクセスを上げるにはどうしたらいいですか?」とブシツケにも聞いてみた。
「myRTモバイル(RTmetricsの携帯アクセス解析ツール)というツールがあるのですが、アクセスしてきた方のブログを拝見し、コメント欄に丁寧にコメントを入れるのです」
なあるほど。アクセスの元をたぐり、ユーザーのブログに“控えめに”使い方や感謝のコメントを入れる。ユーザーは感激して、そのことをブログにまた書く。クチコミが広がる。解析をきっかけにした、ヒューマンタッチのアクセスアップ。検索エンジン相手のSEOで、キーワードを入力しているだけではサツバツとしてつまらない。手間はかかるが、Webの店頭でも“人間=お客さま”を相手にすることがアクセスアップの王道である。
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