コラム
ネーミングで、とりかえしのつかない一歩を踏み出さないために(3/3 ページ)
「和源」と書いて、どのように読めばいいのだろうか。答えは「わーげん」。これは男の子の名前だが、このほかにも「強運(らっきい)」「絆(はあと)」など、読めない名前が増えてきた。なぜ難しい名前を付ける親が増えてきたのか? その要因を考えてみた。
結婚すること。子どもが生まれること。それは、自分らしい暮らしを延長することではない。むしろ、社会を受け入れること。客観的に言えば自分の暮らしの中に、他人を入れること。「自分らしく生きる」ことを、少しあきらめることでもある。
そうして生まれてきた子どもの名前には「自分らしく生きる」ことを託すのではなく、一刻も早く、広く社会に認められる人間になれと託すのが全うではないかと考える。
名前はみんなに読まれて、そのヒトになっていく
昨年より、おもしろいほどネーミングの仕事が増えた。会社の名前や、施設の名前や、媒体の名前や、マンションのブランド名など、いろんな名付けをする機会に恵まれている。そこで、常に考えていることは、「企業らしさ」を修飾する形容詞を探し出したらキリがないということ。企業都合の独り善がりな造語やカタカナは、山盛り出てきて迷うだけである。
だから、極力、社会に向き合うことを是として、言葉を抽出する。「自分らしく生きる」ための形容詞を捨てて、残るものから名付けをすると、意外とうまく行く。総意形成がしやすくなる。
名前は、みんなに読まれて、みんなに呼ばれて、そのヒトになっていく。だから読みやすく、覚えやすくて、感じよく、平凡すぎず、非凡すぎぬ名が一番。俵万智さんの言うとおりである。(中村修治)
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