日本のスタバはどう変わる? カイゼンして改善(1/2 ページ)
米国のスタバの業績が回復しているという。業績回復の要因は「トヨタ流のカイゼン」を取り入れているからだというが、そもそもカイゼンすることによって、どのような効果をもたらすのだろうか?
著者プロフィール:竹林篤実(たけばやし・あつみ)
東大寺学園高校卒業、京都大学文学部卒業。印刷会社営業職、デザイン事務所ディレクター、広告代理店プランナーなどを経て、2004年にコミュニケーション研究所の代表。ブログ:「だから問題はコミュニケーションにあるんだよ」
米国のスタバが業績回復しているらしい。その原因がなんとトヨタ流カイゼンを取り入れているからだという。日本ではまだ、のようだが、スタバのカイゼンはどんな効果があるのだろうか。
Theストップウォッチ
トヨタ流のカイゼンといえば、そのシンボルアイテムがストップウォッチだ。1つ1つの作業をまず計測することからカイゼンは始まる。じっと作業を観察し、その時間を計る。見ているうちにムダを見つけるのが、カイゼン仕事人たちである。
以前、どこかで読んだ話ではデザイン事務所のカイゼンについて書かれた下りがあった。Webデザインを手掛けているオフィスでカイゼンのプロたちは、やはりストップウォッチ片手にデザイナーの動きを計測していたのだという。
するとたちまちのうちに、大きなムダが見つかった。そのムダとは何か。数年前の話である、当時はまだPCが今ほどパワフルではなかったのだ。なので1つ作業をインプットすると、その処理にいくばくかの時間がかかる。例えばPhotoshopでちょっとした画像加工などをすれば、すぐに1分くらいは経ってしまう。これをカイゼン人たちは見逃さなかった。
もう1台、PCを
1分もぼやっとしている。トヨタの工場なら、それこそはりたおされかねない時間のムダである。この空き時間をどうすれば有効活用できるか。カイゼンプロフェッショナルたちの出した答えは、もう1台PCを入れることだった。
単純にデュアルモニターにするのではない。PCも2台、モニターも2台、もちろんキーボードも2台にするわけだ。そして片方のPCが時間のかかる処理をしている間に、もう1台のPCで次の作業に取りかかる。
そりゃむだも省けることだろう。あくまでも机上の計算だけれど、仮に1つの作業に5分かかり、そのたびに1分のロスが生じていたとする。ということは1時間につき約10分ものロスとなる。これを解消できれば、その改善効果は約17%にもなるではないか。
「おぉー、すごい」とデザイン事務所のボスが言ったかどうかまでは知らない。それで良しとするスタジオがあったとしても、まあ不思議ではない。
効率だけでいいのか?
さて、スタバである。どんな改善がなされたかといえば「商品の材料をできるだけまとめ、コーヒーの種類が一目で分かるように色別のラベルを張るなど、無駄を省くための努力をストップウォッチ片手に地道に進めた。オレゴン州の店舗では、1つの注文をさばく時間を平均25秒まで短縮、客も増えたという(日本経済新聞2009年8月6日付朝刊7面)」
ほんまかいな。そりゃ確かに「オレゴン州」の(ある)店舗では作業時間が25秒短縮され、客も増えたかもしれない。が、少なくともこのニュースから分かるのは、それだけだ。ほかの店舗では、どれだけのカイゼン効果があったのだろうか。あるいは、1つの注文時間をさばくのに、そもそもどれだけ時間がかかっていたのだろう。あるいは、客をさばく時間が早くなれば、客が増えるのだろうか。
とまあ、いろいろ疑問はあるのだけれど、それより何よりスタバが効率を追求することは、本質的にアイデンティティクライシスを起こしはしないのだろうか。
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