「空、雨、傘」のフレームワーク(2/2 ページ)
コンサルティングファームで使われるフレームワークで最もポピュラーなものが、「空、雨、傘」と言われるもの。その3つの言葉が意味するものとは何なのだろうか?
「空、雨、傘」と企業の意思決定の関係
まわりくどい説明をしましたが、このプロセスと企業の意思決定は同じです。
「出かけたい」は企業としての意思です。ビジョンの実現に向かうには、この方向に行かなくてはならない。そこで、「外部の環境はどうなのか?」を見てみるのが「空」の部分です。空を見るのは、周囲の環境を見ている。いわゆる外部環境分析です。
そこから「雨が降りそうだ」の判断が「インサイト」の部分です。目的に外部環境を照らして見いだされる知見です。「外部環境のこれから」を予測するのです。顧客、競合、マクロ環境の動向を予測する。ここは当たるかもしれないし、外れるかもしれない。感性の部分です。でも、この部分の精度が企業の競争力になります。より正しい予測ができたほうが強いですよね?
その上でアクションを決める。「傘を持っていく」のです。しかし、「なぜ傘なのか?」が大事ですね。傘しか持っていないケースはリソース制約の話と同じです。アクションを決める時には、保有リソースの制約を受ける。
「雨がっぱはスタイルに合わない」はポジショニングの問題に近いです。「どのポジションを取るのか?」というところでもアクションの優先度は定まります。そういったことを判断した上で、「傘を持っていこう」が決まっているのです。
これはよく見ると、企業の戦略策定プロセスそのものです。
外部環境を分析し、インサイトを見いだし、外部環境のこれからを予測し、その上で、自社のリソース制約、ポジショニングを考えながらアクションを定めるということです。それ以前に、ビジョンが定まっていることが前提ではありますが……。
これらの一連の思考プロセスをギューっと圧縮して、「空、雨、傘」と言っているのです。この枠組みは非常に強力です。ずーっとコンサルティングファームでは、この枠組みは使われ続けています。
知っている人には当たり前のお話ではあります。でも、意外と知らない人が多いお話です。ぜひ、あなたのビジネスに生かして欲しいと思うのです。(伊藤達夫)
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