地域みんなで使えるICカード「めぐりん」の挑戦:神尾寿の時事日想・特別編(4/4 ページ)
高松市からスタートし、四国全体への展開も狙う地域ICカード「めぐりん」。その展開の拠点となっているのが大規模ショッピングセンターのイオンだ。
めぐりんの「地域協業モデル」を全国に広げる
めぐりんで取り組まれている、柔軟かつ運用性の高い地域ICカードへの試み。これが実現した背景には、「FeliCaポケット」の機能やサービスモデルの優秀さがある。前出のフェリカポケットマーケティング社長の納村哲二氏は、FeliCaを用いたICカード事業は「きちんと使われる仕組みを作ることが重要だ」と強調する。
「FeliCaカードを用いたサービスは、お客様と加盟店様に使っていただいて喜ばれなければ意味がありません。『使われてなんぼ』なのです。
そう考えたときに、CRMツールとして使いやすく、異なる立場にある様々な事業者が参加できる仕組みが必要になる。我々のFeliCaポケットはそうした技術やサービス環境を提供させていただく。しかし、その上で重要なのは、地域の地場企業の力です」(納村氏)
地域の様々な企業が連携し、何よりも「利用率の向上」を重視する。これはFeliCaポケットが、加盟店が毎月支払う利用料収入で収益を得るASP型のストックビジネスを展開しているからこその発想だろう。「多くのお客様が使い、加盟店が(めぐりんなどFeliCaポケット導入の)メリットを感じなければ、すぐにでも解約されてしまう。だからこそ、お客様と加盟店の使いやすさや利用率を重視してサービスを作る」(納村氏)のだ。
フェリカポケットマーケティングでは、めぐりんで行われている地域ICカードの取り組みを「地域内協業モデル」の先行事例と位置づけている。
「(高松の)めぐりん事務局と力を合わせて、めぐりんを四国全域に展開していき、きっちりと成功させる。ここで(地方向けFeliCaビジネスの)成功事例を作ります。そして、来年までには、あと5〜6地域でめぐりん型のサービスモデルを開始し、都市部で成功したFeliCaを、地方の経済や生活にも貢献するものにしていきます」(納村氏)
すでに“めぐりんモデル”の水平展開は始まっており、2009年8月には長野県安曇野市を中心としたFeliCaポケット利用の地域ICカード「nagat カート」もスタートしている。ここでもWAONとの一体型カードが作られており、めぐりんと同じく、地域内での連携が重視されているのだ。
地方でのFeliCaサービス活用が重要になる中で、めぐりんをはじめとするFeliCaポケットを利用した地域ICカードの動向は今後の注目と言えるだろう。
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