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営業マンにとって、最良の先生は誰なのか?北尾CEOに“働く”について聞いてきた

「売り上げを伸ばせ!」「ノルマは必達!」――。こんな命令ばかりで、具体的な指示がない上司も多いだろう。そんな上司の下で、部下はどのように仕事をすればいいのだろうか。

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 売り上げの目標やノルマは要求するのに、具体的な指示がない。また聞いても、何も教えてくれない――。こんな不満を抱えているビジネスパーソンも多いかもしれない。

 聞く耳は持たず……といった上司に対し、部下はどのように仕事すればいいのだろうか。SBIホールディングスの北尾吉孝CEOに話を聞いた。

質問:24歳男性、Dさん

 入社2年目、人材派遣会社で営業をしています。直属の上司が具体的な指示をくれないので、困っています。例えば「売り上げを上げろ! ノルマを達成せよ!」と言われるのですが、売り上げを伸ばす営業的手法(成功事例)を教えてくれません。

 さらに新人教育を任されています。しかし具体的な指示は何もなく、マニュアルもありません。会社の組織的な問題もあり、こういった問題は部署内で解決しなければなりません。上司は聞く耳を持たずといった感じなのですが、どのようにすれば職場を改善できるでしょうか?


営業マンにとって一番いい先生


SBIホールディングスの北尾吉孝CEO

 Dさんは入社2年目にも関わらず、自由に仕事をさせてもらっているようですが、ある意味それは幸せなことでしょう。まだ社会人2年目の人に、新人教育を任されるという会社は非常に少ないと思います。にもかかわらずそれを行わせてくれるというのは、むしろありがたいと考えた方がいいでしょう。

 例えば新人教育であれば、書店に行けば新人教育に関する書籍が並んでいます。そういう関係の本を読み、自分の社会人1年目のことを思い出しながら、自分で率先して新人教育マニュアルを作ってみてはいかがでしょうか。こういったことをすればDさんの上司も驚くかもしれません。

 また「具体的な指示をしてくれなくて困っている」とおっしゃられていますが、私はそれでいいと思うのです。私も具体的な指示をする場合もありますが、「自分で考えろ」という意味を込め、何も指示を出さないケースも多いのです。そうすることによって人は自分で考え、自分の知恵と工夫と努力で、仕事の目標をクリアしようとすることが大切なのです。

 もしそういった工夫によって目標を達成することができれば、自分の自信につながります。しかしDさんはまだ2年目なので、自分で考え、良かれと思って行ったことでも、いろいろと失敗すると思います。そうした失敗が無駄に感じるかもしれませんが、決してそれは無駄ではありません。そのような失敗を繰り返さないように試行錯誤していけばよいのです。そうして多くの失敗をしていきながら、徐々に営業マンとしての力に結び付けていけばいいでしょう。

 営業マンの仕事というのは、必ずしも上司から教わることばかりではありません。お客さんが教えてくれることも多いのです。むしろ数多くのお客さんと接し、「どうやったら商売ができるのか」ということを考えることが大切だと思います。例えばお客さんから質問があれば、誠実に対応したり、できるだけ早く返答したり、会社までお伺いしたり、いろいろと試してみてください。こうした自分の行動に対し、すべてのお客さんが同じ反応をすることはありません。またそうした中から、さまざまなことを学んでいけばいいのではないでしょうか。

 仕事が分からないからといって、なんでもかんでも「上司」「上司」という風に考えない方がいいでしょう。営業マンにとって一番いい先生となるのは、自分が対峙(たいじ)するお客さんなのです。どうやったらお客さんが喜び、どうやったらお客さんが怒り、どうやったらお客さんが商品を買ってくれるのか。たくさんのお客さんと接する中で、営業マンとして必要なものを身に付けていくことができるでしょう。私はこれが一番大切なことだと思っています。

プロフィール:北尾吉孝(きたお・よしたか)

1951年生まれ。1974年、慶應義塾大学を卒業後、野村證券に入社する。1978年、英国ケンブリッジ大学卒業。その後、野村證券で海外投資顧問室、ニューヨーク拠点などを経て数々の役職を務め、1995年にソフトバンクの常務取締役に就任する。1999年、ソフトバンク・インベストメント(現・SBIホールディングス)の代表取締役CEOとなり、現在に至る。一方で、財団法人SBI子ども希望財団の理事、SBI大学院大学の学長なども務める。著書に『何のために働くのか』『君子を目指せ小人になるな』(致知出版社)など多数ある。


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