もてなしのプロ“芸妓さん”の世界とは――京都花街の経営学(1)(2/2 ページ)
京都花街、そして芸妓さん、舞妓さんたちの世界は、室町末期から現在に至るまで350年にわたって続いてきた日本の伝統文化の1つと言える。経営学の視点でこの世界を徹底的に分析し、分かりやすく説明している『京都花街の経営学』をもとにその内幕を紹介する。
芸妓さんは自営業者
さて、芸妓・舞妓を目指す女性の多くは、中学卒業後15歳位で花街に入ります。そして、約1年間の集中的な育成期間を経て「舞妓さん」としてデビューします。
舞妓さんとして働く間は、「年季奉公」の時期です。給料は支払われません。舞妓さんを住み込みで受け入れ、育成し面倒を見る「置屋」のお母さん(経営者)からお小遣いをもらいます(「置屋」は、芸人やタレントが所属する、現代のタレント事務所のような存在と考えてもらえばいいでしょう)
でも、年季奉公、つまりデビューから22歳くらいまでの通算6年ほどの期間を過ぎると、「芸妓」として独立することも可能になります。独立した方は、「自前さん芸妓さん」といいます。自前さん芸妓さんは、「芸妓組合」といった組合員組織もある独立自営業者です。
自営業者ですから定年はありません。90歳を過ぎた現役の方もいらっしゃるそうです。「手に職を持つ」ことのできる芸妓は、才覚によっては相応の高収入を稼げ、また「もてなしのプロ」としての誇りを持てるやりがいのある職業の1つだと言えます。
なお、「芸妓」は正式には“げいぎ”と読みますが、京都では通称“げいこさん”と呼びます。一方、東京では“芸者さん”と呼びます。
また、芸妓さんを体を売る「娼妓」(しょうぎ)さんと混同してはいけません。前掲書によれば、売春防止法が施行された昭和30年以前の公娼制度の枠組みの中では、花街には、芸妓さんと娼妓さんの両方がいて、それぞれ別個の存在だったそうです。
「芸」は売っても「体」は売りませんという気概を持ち、芸を磨き続けるのが芸妓さんなのです。いわゆる「旦那」が芸妓を「妾」的に囲うといった暗いイメージもある「水揚げ」も現在はまったく行われていないそうです。
では次回以降、じっくりと芸舞妓のキャリアや京都花街の精緻なメカニズムについてポイントをご紹介していきます。(松尾順)
→次回に続く
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