普段着は着物 “和”の人気サイトを運営する男の思いとは:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
着物、古民家、和雑貨など和をテーマにした人気Webサイト「和の暮らしを楽しむブログ」を運営し、自らも着物を着て生活している男がいる。彼が和にこだわっている理由、そしてこれから目指すものとは何なのだろうか。
面白い、楽しい、気軽な和
増田さんの股引姿で分かるように、彼が目指すのは堅苦しい和ではなく、面白い、楽しい、気軽な和。もちろん伝統や格式、礼儀作法などは大切だが、若い世代にとって和は「古きを訪ねる」だけではなく「新しいもの」という感覚がある。
ある日曜日、私は和服姿の20代カップルを電車で見かけた。その姿は板についていた。2人を見て思った。着物には新鮮なテイストのデザイン、独特の着心地や肌触りがある。色柄をどうコーディネイドするか、洋服では体験できないワクワク感がある。
着物を着ると、アクセサリーも変わる。女子ならカチューシャがかんざしとなり、ハンカチは手ぬぐいに、ネックレスは数珠に。男子は扇子と懐手(ふところで)姿だけでも『ヴィヨンの妻』(増田さん注目の映画)の浅野忠信さんになりきれる。着物は何度も仕立て直しができて、帽子や刺し子の材料にもなる。雑巾になるまで使い倒せるので“Mottainai”が注目される現代にもピッタリだ。
和は平和、調和、なごみ
江戸時代に迷いこんだ脳外科医のドラマ「JIN -仁-」が人気だが、それは和の全盛期にタイムスリップして同化する楽しさがあるからだろう。「和の魅力って何でしょうか?」と増田さんに聞いてみた。
「気持ちが落ち着くこと、ですね」
和とは平和、調和、和みにも使われる言葉。スローな感じ、ギラギラじゃない落ち着いた色合いの世界、自然や祖先を崇める清々しさを意味する。日本や日本人をもっと良くするためのキーワードなのである。
和の価値観に賭けて増田さんは会社を退職し、2009年11月に独立する。すでに和の暮らしを楽しむブログから発展した「ワノコト」を立ち上げ、和のメディアサイトの運営を開始した。思い切ったことだが、いけそうな感じはする。ぜひ社屋は古民家、社員全員が和服の会社を作ってほしい。売上計算はエクセルではなくて算盤で(笑)。私も着物でお邪魔するので。
関連記事
- 厳しい時代の今、“クリエイター・シンキング”に学ぼう
金融危機の到来で社会情勢が急変する昨今、従来のビジネス思考術が通用しなくなっている。ならば、これまで頼りにしてきた処世術の本は閉じ、自分と闘い、自分のキーワードを見つけてきたクリエイターの思考術に学んではいかがだろうか。 - うっかりをなくしたい!――ある慌て者の告白
メールの送信ミス、会議の時間を忘れる……、うっかりミスは誰にでもあるもの。どうして私たちは“うっかり”してしまうのだろうか。うっかりの原因と対策を考えてみた。 - “ブランド”ではなく“雰囲気”――無印良品の強みとは
1980年に始まり、徐々に支持を獲得してきた無印良品。幅広い世代の人気を集めているが、無印良品の魅力とは何なのだろうか。9月18日にリニューアルオープンした池袋西武店を訪問して、その理由を探った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.