変わる“常識”に気付いていますか?:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
常識とか先人の知恵と言われることの中には、長年有効で変わらないこともある一方、世の中の変化にともない通用しなくなってしまうものもあります。学歴信仰もその1つなのではないでしょうか。
学歴の常識が変わる!?
でもこの話を、必ずしもばかばかしいと言っていられない現状が日本にもあると思います。近所で夜遅く塾から帰ってくる多くの子どもたちを見ていると、ちきりんは同じ感覚に襲われます。
あの子どもたちの親は、「高い学歴のある人が、そのことが主要因で出世したり高い給料を得たりする」という常識を持っている。だから、子どもにもその力を付けさせてやろうと、時間とお金を投資して塾に行かせています。でもその常識はその子どもたちが社会に出る頃にも通用する常識として残っているでしょうか。
団塊ジュニア1年分の人数は200万人を超えていますが、2007年時点の18歳人口は130万人、出生数(0歳人口)は110万人を切っています。18歳人口が200万人から130万人に減少した期間、東京大学の定員は約1割減にとどまり(参照リンク、PDF)、早稲田大学の定員もほぼ横ばいです。
すでに、今の学生の親世代の頃に比べて、大学に入るのは超簡単になっています。いわんや10年後をや、です。18歳人口が200万人から110万人へと6割を切っても、大学の学生数はなかなかそこまでは減らないでしょう。
しかも、「学歴がいい人が安定した収入を得られる」ということだって成立しにくくなっています。多くの優秀な学生が就職した一流企業や銀行がつぶれてしまう、それをすでに私たちはたくさん見てきました。これからはもっとそういう傾向が出るでしょう。
であれば、塾に行く時間に、体力を付けておくとか、違う学年の子たちと遊んでリーダーシップなどほかの能力を磨いておく方がよほど良かった、ということになるかもしれない。もちろん余裕があるならいいです。でも生活費を削ってまで、子どもの塾代や私立学校の学費を払い続けるという投資は、もう多分回収できないのではないかしら、とちきりんは思います。
でも、まだこの常識は根強く社会に残っています。「成績を良くして一流大学に入れて一流企業に就職させることが、子どもの幸せの基礎になる」、ちきりん的にはすでに常識ではないと思います。でも親はよかれと思っているわけですから、愛情からの行為です。日本で親が子どもを“塾に通わせる”のも、インドの貧村で親が子どもの“右足を切り落とす”のも同じ。悲しい親の愛情です。
というわけで、常識の変わり目を見つけるのはホントに難しい。ちきりんだって、何らかの“消えゆく常識”に基づいて頑張っている部分もあるでしょう。人ごとではありません。でも、人間ってそういうもんです。将来予測より、実体験に基づく過去の事実はすごく影響が大きい。私たちは過去に縛られた生き物だってことなのでしょう。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
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