ポジティブシンキングの“罠”とは(2/2 ページ)
安易に「ポジティブシンキングで前向きになろう!」と話す人には嫌悪感を覚えるという筆者。それは、メンタルヘルスについて多少詳しい人ならば、安易なポジティブシンキングの危険性を知っているからだという。
それで私がお勧めしたいのは、心の真ん中にいることです。いわゆるセンタリングです。サッカーのセンタリングではございません。
まあ、そんなに簡単ではないですけど、ポジティブにもネガティブにもならない状態。結局、世の中の事象にプラスもマイナスもないですよね? 意味付けしているのはあなた自身です。その意味付けをするのをやめてみるというところです。淡々と、粛々とというところでやっていく。
セラピストの方がおっしゃっているお話ですが、カウンセリングで「いい自分でいよう」としてしまうので、夜、夢の中ですごく反動が来るそうです。カウンセリングを生業にするのも怖いことですね。
いいカウンセラーというのは、クライアントが帰った瞬間にそのお客さんのことを忘れる人だそうです。スッパリと。なかなか大変なお仕事です。
話をもとに戻すと、ポジティブでも、ネガティブでもなく、というところから物事を見てみる、ということです。それは必ずしも平板な目線ではないんですね。
よく言うのは、「周敦頤(しゅう・とんい)の大極図のようなイメージを心に持つ」ということでしょうか。知っていますか? 白と黒が混ざるように交わっている図なのですが、ここで指し示していることは、ポジティブもネガティブも等量、全体としてはゼロであるということです。
「心のセンターに常にいられることが、理想的な状態であって、決してポジティブに前のめりになることが、理想ではない」という認識を持つのが第一歩だと思います。
「それはどんな状態なの?」というと、例えるならば掃除を一生懸命やっていると、汗がふきだしてきます。でも、体は心地よい疲労感に包まれていて、というような時がありますよね?
例えばヨガで言うと、アーサナ(ポーズ)を一通り終えて、リラグゼーションのシャバアーサナ(休息のポーズ)でつい寝てしまう。その時に感じる心の平静。
そんな感覚を味わったことはありますよね? それがあなたの中にすでにあることを知ることが第一歩です。そういった心の状態と、誰でもつながれるという認識が大事だと思います。
うつなんて、持病のようなもので、人事担当者が何かしたから、組織で何かしたから、発病した人が治るということはありません。予防としては、常に心のセンターとつながれるような組織、常にセンタリングをするようなメンバーを作っていくことぐらいです。
いろいろと書いてしまいましたが、「心のセンタリング」という言葉だけ、今日は覚えてほしいです。こういった知見があなたのビジネスライフに生きることを心から願っています。(伊藤達夫)
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