価値観が異なる人から裁かれるのは不利?:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
価値観の多様化で、「お金さえあれば大きなクルマに乗りたい」といった“常識”が崩れつつある日本。多様なバックグラウンド、異なる考え方をする人々の共生を模索できるということで、ちきりんさんは裁判員制度の意義を訴えます。
「刑期を増やしてほしい」という価値観
ところで、ちきりんは小学生の時、裁判を見に行ったことがあるのですが、それがとても興味深い体験で、今でもビビッドに覚えています。
簡単な裁判の判決言い渡しの日だったのですが、9月から禁固3カ月を言い渡された被告人が裁判官に「え〜、3カ月では年越しできん。裁判官さん、できれば春になるまで半年くらい入れておいてほしいんやけど。1月なんかに出されたら寒いし、食べるもんもないし」と言ったのです。
当時まだ“社会派”にもなってないちきりんは、これにマジで驚きました。「え〜、温かいご飯食べたいから冬の間牢屋に入れてくれって頼む人がこの世の中にいるんだ〜!」と。
このように裁判員制度には、裁判員が司法判断に一般人の多様な視点を持ち込めることの意義とともに、裁判に参加することで一般人も、世の中のさまざまな価値観や事象を知ることができる、という意義もあると思います。誰だって自分の回りにいる人だけが世の中だと思いがちですから。
例えば、生活保護を受けている人は、今や日本人の100人に1人以上の割合です(2007年時点の生活保護率は1.21%)。ということは、知り合いが100人いれば、そのうち1人は生活保護で暮らしていて当たり前です。でも、「自分の知り合いの中にそういう人はいない」という人もたくさんいますよね。それはなぜかといえば、生活保護を受けている人がどこかに集中して存在しているからです。
実際の社会は多様な人々で構成されています。身近には存在しなくても、社会のいろんなものを見聞きしたり、実際に触れ合うことは、個々人が“社会人=社会の人”としての視点を形成していくためにも意義深いことだと思います。いろいろと議論も課題もある裁判員制度ですが、ちきりんとしては前向きに(改善を積み重ねながら)いい制度になっていくことを期待したいです。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
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