仕事で成果を出すための“ベタスキル”を学ぼう
仕事で成果を出すために必要なスキルとして、「プレゼンテーション能力」「論理的思考能力」「交渉力」などが取り上げられることが多い。しかし、日常業務で求められるスキルとして、別の重要なスキルもあると筆者は主張する。
著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)
早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。
私たちが、仕事で成果を出すために必要なスキル。時に「コンピテンシー」と呼ばれることもあるスキルとして、あなたはどんなものが頭に浮かびますか?
「プレゼンテーション能力」「論理的思考能力」「交渉力」など、さまざま挙げることができるかもしれません。言うまでもなく、こうしたスキルを高めることは重要です。もちろん、高い成果にもつながりやすくなるでしょう。
でも、普段はあまり意識しておらず、とてもスキルとは呼ばれそうもないものの、日常業務で求められる行動で、よくよく考えてみると成果を出すために重要なスキルもあります。
例えば、国際会議など多くの聴衆が集まった場所で挙手して、講演者に質問するスキル。語学力が大前提として必要ですが、通訳がいて日本語でOKだったとしても、なかなかできるものではありませんよね。
「自分の質問が的を外れていないか」「きちんと質問の主旨を伝えられるか」といった内容面の不安に加えて、何より聴衆の目が自分に注がれるのがイヤですよね。
ここで行動の障害となっているのは、「気恥ずかしさ」という心理。
そこで、まずはこうした心理に打ち勝ち、積極的に手を挙げるようにする。最初は失敗することもあるかもしれませんが、そのうち慣れて平気で質問できるようになるものです。
あるいは、知人が誰もいない立食パーティなどで、見知らぬ人々が穏やかに談笑している輪にうまく溶け込むスキル。これは私もかなり苦手です。どうやって溶け込むきっかけを作っていいか分からずに、結局、壁際に立ったまま1人寂しく過ごしてしまいがち。
でも、これも慣れの問題です。ここでも大事なのは、知らない人の輪に割り込むことで生じる「気まずさ」というネガティブな心理に負けないこと。そして、勇気を出して行動し、失敗しながらコツをつかんでいくのです。
楽に流れようとする自分との戦い
さて、以上のような“ベタスキル”とでも呼びたいスキルの重要性を教えてくれたのは、旧ルノー公団やエアリキードを始めとする、欧州グローバル企業の要職を歴任した今北純一氏でした。
今北氏の華麗なキャリアを見れば分かりますが、語学力は言うまでもなく、ビジネスパーソンとして極めて高いスキルをお持ちの人。しかし、今北氏であっても、誰もが日々の業務で直面する、ごく平凡に思える状況をうまく乗り切るスキルを高めるため、自分自身の心理的な弱さを認識し、それらとの戦いを続けてきたのだそうです。
ベタスキルは、ある意味、お辞儀や名刺交換の仕方といった基本作法の応用版というか、より高度なものだと言えるかと思います。ただ、新入社員向けセミナーなどの研修で身に付くようなものではありません。あくまで日々の実践の中で、楽に流れようとする自分と戦い続けるしかないのです。(松尾順)
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