心の病気になる30代が多いのはなぜ?:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
人がやっていることは、「やらなくてはならないこと」「やりたいこと」「ヒマだからやっていること」の3つに分けられるという筆者。その3つの割合を年代別に見ていくとどう変化していくのでしょうか。
“やりたいこと”の多い人生を!
これをグラフにしてみると下図のような感じなのですが、ここからも面白いことが見えてきます。
「やらなくては、ならないこと」が急増する時は、それについていけない人がでる。
この図を見ていると、「やらなくてはならないこと」が増加する時期が2回あります。最初が、小学校に入ってから高校卒業までの時期。毎年勉強は大変になるし、受験もありますから、自由時間はどんどん減ってしまいます。
するとそのプレッシャーで、途中でドロップアウトする人も出てきます。不登校や非行、高校中退などは、その表れともいえそうです。
2回目に「やらなくてはならないこと」が増えるのは、大学生から社会人になる時です。なので、この時期にも留年してモラトリアムを続けたり、就職しても短期間でやめてしまう人が出ます。
やはり「やりたいこと」に使える時間がどんどん減って、代わりに「やらなくてはならないこと」が増えていくのは精神的に大変なのでしょう。その変化に付いていけない人が一定数現れるのは当然かもしれません。
30代〜40代で、ストレスから心の病気になる人が増えるのも理解できる
この図を見ると、30代〜40代は子育てなどが増えるため、「やらなくてはならないこと」が生活に占める割合が非常に高くなり、しかもその期間が10年以上も続くことが分かります。「やらなくてはならないこと」に占領された生活をそんなに長期間続けるから、ストレス過多になってしまうのでしょう。
人間の社会的な寿命はいまだに60歳くらいなのかも
この図がもし60歳のところで終わるなら、人生のほとんどは「(1)やらなくてはならないこと」と「(2)やりたいこと」だけで構成されます。ところが、生物学的に寿命が延びたのに、社会的な寿命が延びていないので、そこを埋めるために「(3)ヒマだからやっていること」というカテゴリーが大きく出現しているのでしょう。
寿命が延びたのは経済発展による栄養の改善や医学の発展のおかげと思いますが、そちらが進歩したのに、高齢者の生活のあり方が変わっていないので、こういうことが起こっているんじゃないかと。「自然科学の進歩に社会科学がついていけていない」ということかもしれません。
生物としての寿命も社会的な寿命も個人差はありますが、その2つがマッチすると「ヒマだからやっていること」だけで生活が構成されることは避けられます。
自分が擦り切れてしまわないためにも、そしていつか仕事を含め「やらなくてはならないこと」が一気に減少する日を迎えてもいいように、今から生活の中に「やりたいこと」が占める割合を少しずつ増やしていくのがいいのかもしれません。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
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