このまま“暗いトンネル”の世界へ……2010年版のヤミ金事情(3/3 ページ)
改正貸金業法による規制強化で、貸金業界が混乱している。このまま総量規制と上限金利の引き下げが導入されれば、新たな“借金難民”が増え、その受け皿としてヤミ金が増えるかもしれない。
過払い金問題も大きい
貸金業者をさらに追い詰めているのが、過払い金返還請求だ。これは2006年1月に最高裁判所で、出資法と利息制限法で定められた2つの上限金利の間のグレーゾーン金利を違法とする判決が出たことに対する措置。この違法判決を受け、過去に取りすぎていた過払い利息の返還請求が貸金業者に殺到した。
「金利の引き下げによって、貸金業者の廃業や貸付残高の減少を引き起こしているが、過払い金問題の影響も大きい」(日本貸金業協会)といった声もあるほど。事実、過払い金返還請求は貸金業界の経営を圧迫している。消費者金融大手4社の2008年度返還総額は計5826億円、そして2009年度も同水準となる見通し。日本貸金業協会の試算によると、過払金返還請求の対応コストは3年間(2006年度〜2008年度)で4兆円を超える規模となっている(関連記事)。
“暗いトンネル”へ突入するかもしれない
かつて我が世の春を謳歌(おうか)していた貸金業界であるが、いまやビジネスモデルが崩壊し、融資の蛇口を締めている格好だ。東京情報大学の堂下浩准教授は「改正貸金業法による規制強化は、貸金業者からお金を借りられない人を増やした。そして拒否された人たちの中には、お金を工面するためにヤミ金から借りているケースもある」と指摘した。
法律が招いたともいえるこの“混乱”に対し、政府はどのような手を打ってくるのだろうか。ハードランディングを避けるために法律の施行を遅らせることもできるが、亀井静香郵政・金融担当相は「予定通り2010年6月に完全施行を行う」という立場を崩していない。
改正貸金業法の完全施行まで、残り時間は少ない。貸金業界では「もはや時間切れ」といったあきらめムードも漂っており、このままいけば“暗いトンネル”へ突入することになりそうだ。
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