“パワーシニア”の国、ニッポン:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
シニアが早期引退を望み、優秀なら若い人でも経営の第一線で活躍する欧米の労働社会。一方、日本で経営の第一線に立っているのはシニアばかりだ、とちきりんさんは主張します。日本ではなぜシニアが強いのでしょうか。
(4)実際、シニア層の方が優秀だ
日本には「経験を知識にして学ぶ」という仕組みがなく、「経験は経験として学ぶ」という方法しかありません。そのため、学ぶのに時間がかかり、学び終えた時にはみんなシニアになっています。
「経験を知識として学ばせる」のは米国が得意な方法で、彼らは経験知を何でもマニュアル化して、学校で教え、意識的に若い人を育てようとします。だから若い人の成長が早いのです。
一方、日本には「誰かが20年かけて学んだことを、システマティックに3年で学ばせる」という概念がありません。さらに言えば、そういう概念が嫌いなようです。「経験を知識として短期間で学ぼうなんてずるい考え方だ」「時間をかけて、人生をかけて学ぶべきだ」と心の底で思っているのです。
そのため、日本では「若い=未熟」です。頭が良く、新しい分野の知識があって、行動力もあるのに、精神的な未熟さ、視野の狭さ、場や雰囲気をつかむ下手さなどのために、狡猾なシニア層の手の平で踊らされてしまっています。リーダーとして必要なことを、誰しも「年齢分しか学べない」のであれば、若い人はいつまでたっても年をとっている人にかないません。
パワーシニアの国、ニッポン
というわけで、日本のシニア層が元気な理由をまとめると↓のようになります。
(1)寿命が長くなり、シニア層には長い時間がある
(2)“家庭”の価値が低いので、いつまでも仕事社会に居続けたがる
(3)年齢だけによって機会を分配するので、若い人にリーダーポジションが与えられない
(4)経験を知識や知恵として学ぶという教育方法がないため、学びに長期間が必要で、学んでいるうちにみんなシニアになってしまう(結果としてシニアの方が優秀になる)
日本は、パワーシニアが出現する条件が揃いすぎており、彼らは出るべくして出てきたと言えるのではないでしょうか。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
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